大統領選で露呈したブラジルの深過ぎる溝
構造改革は待ったなし
ミクロ的には、公共投資の不足がインフラ整備の遅れと輸出コスト高騰を招いている。教育への投資も不十分だ。チリと同じく就学率は急上昇しているが、貧しい子供に質の高い教育を受けさせるには至っていない。OECD(経済協力開発機構)の国際学習到達度調査(PISA)でブラジルはメキシコやチリを下回り、最下位に近かった。
マクロ的には、公共貯蓄が不足すると国レベルで貯蓄が不足する。外国投資を利用できる間は多額の対外借り入れによって好況を実現するが、期間は短く経常赤字も拡大する。外国投資が枯渇すれば、国内投資が低迷して成長は鈍化する。
こうした欠陥に対し、具体的な対応策を欠くルセフ。勝利宣言では国民に結束と対話を呼び掛け、成長を促すべく「早急に手を打つ」と誓うにとどめた。
労働党は、産業政策の手法を誤っている。技術革新を促すために国内の主要部門と提携するのはいいが、価格統制や補助金のばらまき、保護主義に走るのはよくない。近年のブラジルは後者の道を歩んでいる。
ルセフは対策を急ぐべきだ。公的債務残高は対GDP比60%台、通貨は不安定でインフレ率も高い。政府に対する金融市場の反対は厳しいだろう。
一方ネベスのPSDBは今回の総選挙で議席数を増やし、サンパウロなど主要州の知事選を制した。次回18年の大統領選で勝利するには、ブラジルの貧困層に、彼らこそPSDBの政策の最大の受益者だと納得させなければならない。
そのときこそ根深い溝は修復され、近代的で有能な社会民主政権が誕生するはずだ。
© Project Syndicate
[2014年11月11日号掲載]