ISISの報復は米本土へのテロ攻撃か
イラクとシリアを席巻する彼らの作戦遂行能力はアメリカにとって「本質的な脅威」との声も
侮れない強敵 クルド人自治区との境界付近に設置された検問所を守るISISの戦闘員 REUTERS
迷彩服姿に自動小銃を手にしたひげ面の男が、カメラの前で笑って言った。「ホワイトハウスにアラーの旗を立ててやる」
男の名はアブ・モーサ。ISIS(イラク・シリア・イスラム国、別名ISIL)の広報担当者だ。このスンニ派テロ組織は予想を上回る勢いでイラクとシリアを席巻している。彼らはアメリカにとって、どの程度の脅威なのか。
指導者のアブ・バクル・アル・バグダディは09年にイラクの米軍収容所から釈放されて以来、アメリカへの復讐を誓っているようだ。出所の際に「次はニューヨークで会おう」という 捨てぜりふを残したという。
米上院軍事委員会のメンバーでもある共和党のリンゼー・グラム議員は、ISISを「本質的な脅威」とみている。「シリアとイラクでの作戦遂行能力を考えれば、アメリカの都市が炎に包まれてもおかしくない。大統領は本気で対応すべきだ」
グラムの主張は極端かもしれないが、ISIS脅威論を唱える向きはほかにもいる。それでも今年6月の世論調査によれば、米軍の空爆を支持する意見は45%。地上軍の派遣を支持する声は30%にすぎなかった。
グラムの主張とオバマ政権の慎重姿勢のどちらが正しいのか。「明らかに『本質的な脅威』ではない」と、ブルッキングズ研究所の中東専門家シャディ・ハミドは指摘する。だが同時に、無視できるわけでもないという。「今のISISは近くの敵との戦いに注力しているが、将来もそうだという保証はない」
政府の対策は過剰気味
では、アメリカへのテロ攻撃の危険は高まっているのか。ISISの今後の動向についてはオバマ政権高官も懸念している。
例えばケリー国務長官はこう語った。「わが国は今後もこの地域の同盟国や国際社会と協力してイラクの人々を支援する。ISISの暴力的なイデオロギーはイラクと中東地域、アメリカにとって重大な脅威だ」
ヘーゲル国防長官も、ISISを国家安全保障上の脅威と考えている。
「(ISISを)侮ってはならない。戦力のレベルは高く、よく統制されていて資金力もある」