韓国が輸出する超小型犬の悲劇
通常の犬より弱い抵抗力
ジャオはチビターノに、子犬を販売したアメリカの業者についてネットで調べてみるよう助言。するとこの業者は、多くの飼い主から苦情を受けていることが分かった。
韓国生まれのティンカーベルを売ったのは、テキサスを拠点に販売会社を経営するアシュリー・アンダーソン。彼女は取材に答え、獣医師の正式な診断書を添えて苦情が届いたことは一度もない、と主張した。チビターノから連絡があったのも、同社の保証期間である48時間を過ぎてからだったと言い張る。
アメリカの多くの州は州境を越えてペットを販売する場合に健康証明書を用意するよう義務付けているが、アンダーソンは輸入後のティンカーベルを診察した医師の名前を明らかにしようとしなかった。
ティーカップ犬ビジネスは、透明性とは程遠い。あまりに多くの子犬が劣悪な環境の檻に押し込められ、長旅に耐えられないほど幼いうちに輸出されている。そのため取引を問題視すべきだと、動物保護団体に加えて韓国のブリーダーも訴えている。
体が極めて小さいだけに、ティーカップ犬は通常の犬よりも低血糖などの深刻な症状に陥りやすく、ストレスや非衛生的な環境で命を落としやすい。
「生産性を最大限に向上させるため、子犬は早いうちに母犬から乳離れさせられる。これが大きなストレスになることは周知の事実だ」と、ペンシルベニア大学獣医学校のジェームズ・サーぺル教授は言う。「他の子犬と一緒に大量に押し込められ、長い距離を移動することもストレスと感染症の危険を高める」
韓国には劣悪な環境で子犬を大量生産する「パピーミル(子犬工場)」が林立していると、韓国動物権利擁護団体(KARA)のボラミ・セオは言う。KARAの試算では国内に最大3000〜4000のパピーミルが存在し、各施設が一度に100〜800匹を育てる。犬は家畜に分類されないため、公式の統計はない。
韓国の多くのブリーダーは、施設の取材を拒否した。だが一般客を装ってソウル郊外の金浦にある巨大パピーミル施設を訪れて話を聞くと、ここのブリーダーはティーカップ犬の輸出はお断りだと言った。輸送中か到着後1カ月以内に約3分の1が死ぬ可能性が高いからだという。
アンダーソンに子犬を販売したのは、韓国で「ビクトリーペット」を経営するジュン・ソクだ。彼が言うには、子犬がアメリカへの輸送の途中で死んでも同社に責任はない。「小さな犬にとって、長旅はただでさえストレスになるから」だという。空港への輸送から検疫まで含めて韓国から北米まで約20時間を要する旅は、2〜3歳の成犬でもきついという。
彼はパピーミルから子犬を買うことは一切していない、と付け加えた。彼は自ら取引先のブリーダーを訪れ、施設の衛生状態を確認し、韓国の2人の獣医師と共に子犬の状態をチェックしているという。