最新記事

ナイジェリア

残虐ボコ・ハラムの真の狙い

234人の女子生徒が学校から連れ去る暴挙に、当局さえ動きが鈍いのは

2014年5月21日(水)15時11分
ジェス・ジマーマン

拉致 子供たちの救出を訴える住民(4月30日、首都アブジャで) Afolabi Sotunde-Reuters

 先月から首都アブジャで爆弾テロが続くナイジェリア。中旬には、北東部ボルノ州の学校から16〜18歳の女子生徒200人以上が拉致された。2週間以上が経過しても多くの生徒が救出されていない。一部報道によれば、少女たちは隣国のカメルーンやチャドに連れていかれ、武装勢力メンバーに「花嫁」として売られているという。

 ボルノ州では欧米流の学校教育を敵視するイスラム武装勢力ボコ・ハラムによる学校などへの襲撃が相次ぎ、学校は3月18日から休校になっている。今回拉致された生徒は物理の試験を受けるために登校していた。

 犯行声明は出ていないが、昨年の停戦をお膳立てした政府関係者にボコ・ハラムから身代金の要求があったという(ボコ・ハラムは爆弾テロへの関与も疑われている)。

 ボコ・ハラムはイスラム教徒が多いナイジェリア北東部にイスラム法の国家を創設することを目指している。

 5年前から掃討に乗り出した治安当局との衝突が激化。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによれば、今年1〜3月に少なくとも1500人が死亡、難民の数は2年で52万人以上に達している。

 地元当局によれば、拉致された生徒の2人はヘビにかまれて死亡し、数十人が自力で逃げたという。ナイジェリア政府は当初、拉致された生徒の数を129人と発表したが、保護者や学校側は234人だと主張。軍も先月16日に一部の生徒を救出したと発表しながら翌日になって撤回した。

 地元選出の上院議員は、ボコ・ハラムと拉致された生徒の消息について毎日のように最新情報を軍に提供しているが行動を起こす気配はないという。当局の対応が甘いのはジョナサン大統領を支持しない自分たちへの嫌がらせではないかと、生徒の家族や地元住民は勘繰っている。大統領はキリスト教徒が多数派を占める南部の出身で、ボルノ州など北東部の政治家とは対立する立場にあるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中