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インドと日本を結ぶ意外な友情

2014年4月18日(金)12時12分
パラシュ・ゴシュ

第3のパートナーも必要

 国際戦略研究所(IISS)の地政学的経済学・戦略部門ディレクターで、ニューデリーの政策研究センターの名誉研究員でもあるサンジャヤ・バルーは、インディアン・エクスプレス紙への寄稿で、もしもモディが首相に選出されれば「国民の士気を高めるため」に安倍同様の民族主義的な外交政策を取るだろうと書いている。

「国内経済への投資と海外での戦略的インフラ投資を組み合わせる安倍のやり方を、モディは高く評価している」と、バルーは指摘している。「彼は瀕死のインド経済の活性化に重点を置いている。不景気が続く日本で安倍が権力の座に就いたやり方とまさに同じだ」

 安倍とインド次期首相と目されるモディの両者に必要なのは、今後、中国に対抗していくためのアジアにおける「第3のパートナー」かもしれない。インドの著名な政治アナリストであるジャスワント・シンは、インドと日本、韓国の3国が安全保障面で協力して、中国に対抗する3本柱を構成することを提案している。

 インドの財務相、外相、国防相を歴任したシンは、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と日本の安倍首相がいずれも、中国が「昨年11月に韓国の防空識別圏と約3000平方キロ重なる日本海上空に新たな防空識別圏を一方的に宣言したこと」に危機感を募らせていると指摘。これを受けて日韓両国は、中国南方においてインドと連携し、防衛・安全保障を強化する(原子力エネルギーに関する協力も含む)動きに出たと論じている。

 日本の小野寺五典防衛相は1月、インドを訪問し、4日間にわたり防衛当局者と協議を行った。「日本とインドの戦略的およびグローバルなパートナーシップを強化する」ための2国間安保協定の詳細を詰めることが目的だった。これには海賊対策や海洋安保、テロ対策などで協力を深化させる合同演習や軍事交流も含まれる。

 ウッドロー・ウィルソン国際研究センター(ワシントン)の上級研究員マイケル・クーゲルマンは、印日関係はアジアにおける最も良好なパートナーシップの1つだとしている。「両国はアジアにおける中国の影響力増大に懸念を募らせるなか、この数年で特に親密さを増した」と彼は言う。「中国に関する懸念が、おそらく緊密さの一番の理由だろう」

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