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プライバシー

徘徊者をGPSにつないだら

2014年4月28日(月)12時33分
エリカ・ハヤサキ(カリフォルニア大学アーバイン校助教)

 こうした試みは重要だ。米国アルツハイマー病・認知症ジャーナルによると、24時間以内に発見しないと、徘徊者の約46%が死に至る。

 だが、追跡装置には人権の問題も付きまとう。認知症や自閉症の患者でも比較的普通の暮らしを送っている人はいる。彼らにとって「(本人の)同意なく追跡されるのはプライバシーの侵害だ」と、ワシントン大学のアダム・ムーア准教授(情報倫理学)は言う。

 メリーランド大学のデービッド・グレイ教授(法学)は、政府の情報入手に懸念を示す。「現在は民間と政府のアクセスを隔てる壁がない」と、グレイは指摘する。「子供や高齢者が装置を着けて企業や団体が追跡している場合、政府が要請すれば簡単に情報を入手できる」

 それはバザードも心配だが、今は活動範囲が広がってきた娘の安全のほうが心配だ。キャロラインの手の届かない所に新たに鍵を付けたし、玄関のドアが開いたらブザーが鳴る装置も取り付けた。それでも24時間監視できるわけではない。

 米小児科学会(AAP)の学術誌「小児科学」に掲載された調査研究によると、自閉症児の半分近くに徘徊の傾向がある。また彼らは川や湖など水のある場所に好んで近づく傾向があり、危険な事故に巻き込まれることも少なくない。

 バザードは、政府による盗聴や強制調査などを認めるテロ対策法(いわゆる「愛国法」)が、時限法から恒久法に格上げされることには反対した。地元の学区で、IDカードに追跡機能を付ける計画が頓挫したときは胸をなで下ろした。

 だが、これは違う問題だと、彼女は考えている。「私たちは娘を守らなくてはいけない」と、バザードは言う。「政府の介入抜きでやれたほうがいいかと問われれば、答えはイエスだ。障害者にも権利がある。でも、うちの娘に(政府が支援する)追跡装置を使うかと問われたら、迷わずイエスと答える」

[2014年4月15日号掲載]

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