最新記事

中国

ブタ死骸が大量漂流する汚れたモラル

鳥インフルエンザの感染源とも疑われる豚問題の原点

2013年4月4日(木)12時48分
タリア・ラルフ、長岡義博

無責任 豚の死骸を片付ける作業員 Reuters

 最初に発見した人はさぞかし驚いたことだろう。中国で最も発展した経済都市である上海を流れる黄浦江を、数え切れないほどの豚の死骸が流れてきたのだから。

 先週、市民の水源でもある黄浦江で6000頭以上の豚の死骸が見つかると、上海市当局は慌てて「水道水の水質は衛生基準の範囲内」と発表。死骸の一部から「豚サーコウイルス」が検出されると、「人には感染しない」と影響拡大を否定した。ところが後に、川の水のサンプルからウイルスが検出された。

 川の上流の農民が病死した豚を投棄したとみられているが、上海市民が警戒すべきなのは、水質悪化ではないかもしれない。

 新華社通信によれば、上海の隣に位置する浙江省の裁判所で先週、病死した豚の肉を売っていた46人に有罪判決が言い渡された。浙江省の地元当局が昨年、豚の病死肉摘発キャンペーンを実施したところ、ウイルス検査で陽性を示した豚肉約6トンが見つかっていた。

 中国で病死豚肉の売買が横行するのは、インフレで豚肉の値段が高騰していることが背景にある。「汚れているのは川の水ではなく、この国のモラルだ」と、作家の李明生(リー・ミョンション)は嘆いている。

From GlobalPost.com特約

[2013年3月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、3月15.5万人増に加速 不確実

ビジネス

任天堂、「スイッチ2」を6月5日に発売

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中