最新記事

アフリカ

危険でもアフリカ目指す中国企業を待つ現実

2013年1月21日(月)14時49分
ミンシン・ペイ(米クレアモント・マッケンナ大学教授)

危険は承知で突き進むか、欧米と協調するか

 独自の兵力展開能力を持たない状況で、中国が取り得る選択肢は、2つに1つだ。

 第1の選択肢は、特に何もせず、進出先の国で自国の企業と国民を危険にさらし続けるというもの。この選択肢は、魅力的とは言い難い。

 莫大な経済損失を被る恐れがあるだけでなく、国内でも政治体制の土台が揺らぎかねない。スーダン人質事件後、中国のサイバー空間では政府批判が高まった。同様の事件が相次げば、中国政府はますます無能だと思われてしまう。

 第2の選択肢は、これまでの単独路線を捨てて、欧米諸国と共同で資源確保に努めるというもの。この場合、中国政府が発想を根本から変えることが不可欠だ。

 資源確保をゼロサムゲームと位置付けるのをやめて、欧米諸国との間には共通の利益があると認識する必要がある。欧米と共同行動を取れば、資源保有国に進出した自国の企業と国民の安全を確保しやすくなると、理解しなくてはならない。

 協調路線に転じれば、恐らくメリットは大きい。まず、資源開発権の獲得競争で欧米に勝とうとして莫大な予算をつぎ込む必要がなくなる。

 それに、欧米と手を組んで資源保有国の安全を高められれば、その国で自国の投資と経済的権益に及ぶ危険を減らせる。スーダン人質事件のような危機が持ち上がっても、近隣に軍事力を展開している欧米の国に支援を仰げるかもしれない。

 欧米諸国に対する被害妄想を捨てられない中国の指導部には、このような提案はあまりに甘い考えだと映るかもしれない。しかし戦略を変えなければ、協調路線に転換するよりもはるかに悪い結果を招く。

 中国政府が現在の路線を突き進み、あくまでも他国を排除して天然資源を確保することを目指し続ければ、いずれスーダン人質事件どころではない重大な危機に見舞われるだろう。

From the-diplomat.com

[2012年3月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中