セックスと嘘と新・重慶事件
大衆受けする性的醜聞
今年8月、男女6人による乱交パーティーの写真約120枚がネットに流出した。なかでも話題になったのは、性交中の際どい写真ではなく、黒い下着姿の女性2人と、メガネ以外は全裸の男性3人が並んで収まった「記念写真」だ。
写真がネットで広まると、この男たちは安徽省廬江県の共産党幹部だという声が上がり始めた。だが県側はこの指摘を断固否定。ある新聞には「裸の男はわが県トップではない──県当局」という見出しが躍った。
結局県は最後まで、あの写真は5年前に「誰とも知れぬ遊び人たち」を撮影したものだ、という見解を崩さなかった(後に男性1人が党の下級職員であると認めてクビにされたが)。
昨年の「陰毛大臣」事件も強烈だった。当時江西省の政府副秘書長だった呉志明(ウー・チーミン)は、2人の愛人とお楽しみ中のところを警察に踏み込まれて逮捕された。その室内にはコンドームとバイアグラ、それに2冊の「快楽日記」があったという。
日記は呉のもので、1冊には計136人の女性とセックスをした日時や満足度が律儀に記録されていた。さらにもう1冊には、それぞれの女性の陰毛が貼り付けられていた。
呉の「目標」は、15年までに1000人の女性と寝ることだったとされる。ネチズンの間ではこの日記を印刷して、教科書として政府関係者に配るべきだという冗談も飛び交った。
とはいえ、微博をはじめとする中国のメディアで性的な話題が盛んに取り上げられるようになったのは、セックススキャンダルそのものが増えているという事実だけでは説明できない。そこにはセックス絡みの醜聞は売れる、という古今東西に共通する真理がある。
今も検閲は存在するが、中国のメディアが政府の退屈なプロパガンダを垂れ流すだけの時代は遠い昔になった。メディアは利益追求の姿勢を一段と強め、役人や著名人のスキャンダルに一段と多くのページを割くようになった(もちろんそれによってメディアやジャーナリストの立場が危うくならない限り、という条件付きだが)。
醜聞にポルノの要素が加われば、読者急増は間違いない。インターネットならなおさらだ。このため、得てしてメディアもネチズンもセックスの要素を誇張しがちになる。
多くの識者は微博ユーザーに、もっと政府の不正を暴いて、汚職は割に合わない犯罪であることを役人に思い知らせてやれと唆す。高級官僚養成機関の中国国家行政学院の汪玉凱(ワン・ユィカイ)教授は、「汚職のツケを真に重くして初めて、役人たちは信頼を回復することができる」と言う。