コンゴを引き裂く2つの殺戮部隊
反政府武装勢力M23と政府軍はどちらも人道犯罪にまみれている。戦闘に追われて逃げるコンゴ東部の住民にあるのは絶望だけ
戦火に追われて 国連平和維持部隊は反政府勢力の侵攻も防げなければ、戦闘から住民を守ることもできない Jonny Hogg-Ruters
中央アフリカのコンゴ(旧ザイール)で、再び紛争の火種がくすぶっている。
コンゴ東部の都市サケの郊外では先週末、国際赤十字のメンバーが死体を回収していた。既に血まみれになった担架に次々と死体を乗せ、埋葬場所まで運ぶ。死亡者の親戚縁者に息子や兄弟、父親の死を告知できるよう、作業にあたる人々は死体からIDカードを取り外していた。
先週、反政府武装勢力のM23(3月23日運動)が政府軍を撃退した戦闘で、サケの住人数万人が避難を余儀なくされた。その後2日間、死体は道路脇に放置されたままだった。この攻撃以降、前線はしばらく安定している。周辺国の政府は、コンゴ東部の紛争を大規模な内戦に拡大させないよう、協議を始めた。
同盟国の首脳から圧力を受けたジョセフ・カビラ大統領は、M23と交渉する意向を示した。軍部を離反した将校が率いるM23は、ルワンダの支援を受けていると見られ、今年4月に戦闘を開始した。
コンゴ政府はM23が東部北キブ州の州都ゴマからまず撤退するよう要求しているが、M23は拒否した。M23の政治部門トップのジャンマリー・ルニガ・ルゲレロは、いかなる撤退も「交渉の結果」で、「前提条件」ではないと主張している。M23の軍事部門トップのスルタニ・マケンガは今週隣国ウガンダの首都カンパラを訪問し、ウガンダの軍部トップと会談した。
和平交渉はぎこちなく始まる一方で、今回の戦闘が引き金となった恐怖は収束する気配を見せていない。人道危機は増大している。
M23の侵攻地帯の最前線にあたるサケ南方の村シャサは、表面上は静寂が支配していた。政府側に忠誠を誓う民兵組織マイマイのメンバーが、わずか数百メートルしか離れていない場所に陣地を置いている。政府軍の戦車のキャタピラはロケット弾で吹き飛ばされ、毎朝散発的な銃撃戦が起きる。
政府軍兵士はレイプや略奪に走る
反政府勢力の最前線から数キロしか離れていない街キロチェでは、住民が夜間の安全を病院に求めて眠りについていた。戦闘が再び始まるかもしれないし、退却途中の政府軍が不安に駆られてレイプや略奪に走るかもしれないからだ。
「これが初めてではない」と、25歳のデューメルセ・サルコンボは言う。「皆泣き疲れた。まったく信じがたい出来事だ」
M23に撃退された政府軍の兵士が集まる街ミノバにたどり着いた数少ないジャーナリストは、悲惨な状態だと証言している。昼過ぎには酔っぱらった兵士が、好き放題レイプや略奪を行っている。
政府軍は長らく、腐敗した強欲な集団と見られている。人権侵害は数限りなくあり、その種類は多岐に及ぶ。つい先週には将軍のアミシが、政府側の武器を自分の部下が戦う相手の反政府勢力に売り渡していたという容疑で罷免された。