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津波

海を渡ってきた悲劇の「遺物」

2012年10月19日(金)15時00分
ウィンストン・ロス

政府の対応には限界も

 ウォッシュド・アショアは、集めた漂着物をすべて作品に使うことを原則としている。日本の被災地から流れ着く漂着物の中には、大量の発泡スチロールが含まれるので、それをすべて活用するために、作品の作り方を変える必要があると、ポッツィーは言う。鉄の漂着物を溶接して作品の骨組みにする代わりに、発泡スチロールを台座に用いることになりそうだ。

 ボランティアが漂着物の回収に乗り出すのは、歓迎すべきことだろう。連邦政府も州政府も、地元に十分な処理費用を提供できていないからだ。海洋大気局(NOAA)はワシントン、オレゴン、カリフォルニアの3州に5万ドルずつの予算を支出したが、これはオレゴン州政府がこれまでに支出した処理費用の10分の1でしかない。

 NOAAの広報担当であるキーリー・ベルバによれば、同局は海洋上の漂流物除去作戦を実施しており、これまでに45トンを回収したという。しかし、津波による漂流物が浮遊している海域は、広さにしてアメリカ本土の面積の3倍に達する。
結局、NOAAにできることはほとんどない。せいぜい海洋の浮遊物の状況を監視し、海岸に漂着した場合の対策を助言するくらいしかできない。

 近く、太平洋上の風向きと海流が変わり、西海岸にますます多くの漂着物が押し寄せ始めるはずだ。そういう中には、本物の「宝物」が含まれているかもしれない。

 今年3月、アラスカの島に日本語が書かれたサッカーボールが流れ着いた。海岸でそれを拾った人たちは、持ち主である村上岬という岩手県の高校生を捜し出し、ボールを送り届けた。

 被災して何もかもなくした村上は、喜んで受け取った。そのボールは、小学校を転校したとき、同級生たちからお別れにプレゼントされたものだった。そこには、友達からのこんなメッセージが書かれていた──「村上岬君がんばれ!!」。

[2012年9月26日号掲載]

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