大人になれない韓国外交
挑発的な行動と具体性に欠ける謝罪要求を日本に突き付ける韓国のやり方はイエローカードに値する
政争の具 李の独島(竹島)上陸には韓国国内でも「政治利用」という冷めた見方がある The Blue House-Reuters
すっかり冷え込んだ日韓関係を象徴する出来事の1つといえば、今夏のロンドン・オリンピックのサッカー男子3位決定戦のあのシーンだろう。
日本に勝利した後、韓国代表チームの朴種佑(パク・ジョンウ)が「独島(竹島の韓国名)はわが領土」というプラカードを掲げた一件だ。スポーツの祭典に政治を持ち込まないという伝統と規範を、今大会で唯一破った選手だった。
試合後の出来事もさることながら、試合そのものが最近の両国関係における韓国の外交姿勢を反映するような内容だった。テレビ中継によれば韓国側が特に攻撃的で、前半だけで3枚ものイエローカードを出された。
韓国には外交の分野でもイエローカードが出ていた。言わずもがなだが、李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島に上陸し、日本に数々の要求を突き付けたことだ。李のこの無責任な行動は、両国関係に長期にわたって影を落とすことになるだろう。
日本は今年度の防衛白書に、竹島を「日本固有の領土」と明記している。別に目新しいことではないが、これで領土問題が再びくすぶり始めた。さらに韓国は竹島周辺での軍事演習計画を発表し、緊張をあおった。
この局面で李は緊張緩和の道を模索するどころか、竹島訪問を断行。状況をさらに悪化させてしまった。
李は竹島上陸について、日本に歴史問題の解決を迫るためだったと韓国のマスコミに説明。植民地支配について、日本の天皇に「心からの」謝罪を求めた。
この要求に、日本政府は不快感を表明した。過去を認めたくないからではない。既に何度も謝罪を行ってきたからだ。
とかく見過ごされやすいが、日本の政府と社会はこれまでにも第二次大戦中の侵略行為に関する理解や和解、謝罪の努力を行ってきた。
歴史の教科書には日本軍による南京事件や慰安婦問題、強制労働などの記述があり、最近のスタンフォード大学の研究によれば、その記述は決して過去を正当化するものではない。元慰安婦への補償に当たるアジア女性基金も設立された(補償事業を終え、07年に解散)。
日本の努力を認めない
90年代以降は、何度も謝罪を行っている。有名なのは、日本政府による公式な謝罪と位置付けられた95年の「村山談話」だが、ほかにも歴代首相や現在の天皇が謝罪や反省の言葉を口にしており、韓国に直接向けられた謝罪もある。
90年5月には海部俊樹首相が、92年1月には宮沢喜一首相が韓国の盧泰愚(ノ・テウ)大統領に、戦時中の日本が韓国民に対して取った行動を謝罪。96年6月には、橋本龍太郎首相が金泳三(キム・ヨンサム)大統領に従軍慰安婦問題について謝罪。10年8月には菅直人首相が過去の植民地支配について謝罪し、日韓併合時代に持ち出された朝鮮王室儀軌など約1200冊の古文書を引き渡すと表明した。
それでもこうした公式謝罪と逆の発言をする政治家の存在や、14人のA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝といった行動ばかりが注目され、一部の個人の言動が多くの日本人の感情を代表しているかのように扱われることが多い。それによって、政府の取り組みによって生まれた前向きな勢いが帳消しにされてしまうのだ。
むろん、李のような国家元首の発言にはもっと重みがある。だが今回の李の要求には知識不足、あるいは日本のこれまでの努力を認めようとしない気持ちが表れている。さらに悪いのは、完全な政治的意図による発言に思えることだ。
実兄や側近の汚職スキャンダルや、日本との軍事情報共有の試みが理由で李の支持率は低迷している。憲法の規定で再選を目指すことはできないが、12月の大統領選に向けて、与党の支持率を上昇させたい狙いがあるのかもしれない。実際、李の行動が韓国民の自尊心に火を付けたのは間違いない。