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イスラエル対イラン主戦論でネタニヤフが突出
悲惨な戦争を嫌う世論は指導層からの反論もねじ伏せて早期の空爆を主張するが
筋金入り 強硬過ぎてオバマ米大統領にも会談を蹴られたネタニヤフ Reuters
イスラエルのペレス大統領が、ネタニヤフ首相に待ったをかけた。同国のテレビ局チャンネル2に出演したペレスは先週、アメリカの承認なしに単独でイランを攻撃すべきではないとコメント。イランへ強硬姿勢を取るネタニヤフを牽制してみせた。
「わが国だけで攻撃を行うのは不可能だ。(イランの核開発を)遅らせる以上のことをするには、アメリカの協力が必要なことは明らかだ」
これでネタニヤフは対イラン戦略を再考せざるを得ないだろう、との見方がメディアに出る一方で、ネタニヤフ側はすぐさま痛烈に反論。ペレスの発言は越権行為に当たると批判し(イスラエルの大統領は形式的な存在で政治的権限を持たない)、ペレスがこれまでに犯した数々の「安全保障上の失態」を挙げる側近の声が報じられた。
政府関係者によれば、2人は以前から犬猿の仲だった。イラン問題をめぐる意見の相違は、いわば当然の帰結。ネタニヤフは筋金入りのタカ派で、ペレスは徹底した平和主義者だ。
ただし今回の対立が浮き彫りにするのは、イスラエル国内のもっと大きな動きだ。ネタニヤフとバラク国防相が対イラン開戦に踏み切ろうとするなか、普段は公的な場で意見を述べることのない人々が、続々と見解を表明するようになっている。
例えば諜報機関の元トップや現職の軍幹部、長年イスラエルが内密に進めてきた核開発計画に関与する多数の政府高官などだ。中にはイラン空爆を公然と擁護し、核兵器を持つイランと対決するよりは先制攻撃を非難されるほうがましだと主張する者もいる。ただ全体としては、戦争は悲惨な結果をもたらす可能性があるとして、イラン攻撃に反対する意見のほうが多い。
イラン側は、核開発の目的は平和利用だと述べている。しかしネタニヤフは、イランは既に複数の核兵器を造れるだけのウランを濃縮していると主張。オバマ米大統領に対しても、対イラン制裁を強化し、外交努力を尽くした結果、策がなければ軍事力の行使も辞さないと明言するよう働き掛けてきた。
この数週間、イスラエルとアメリカはイラン問題をめぐるやりとりを密にし、米政府高官のイスラエル訪問も続いている。イランを攻撃するかどうか結論は出ていないとネタニヤフは語っているが、国内メディアはこの1週間、開戦が近いという論調の記事を書き立ててきた。
イスラエルで一目置かれている2人のジャーナリスト、ナフム・バルネアとシモン・シファーは、ネタニヤフとバラクは11月の米大統領選の前に開戦するという決断に至ったと報じた。しかし軍関係者の強い反対を考えれば、ネタニヤフが閣僚の過半数の支持を集められるかどうかは疑問だとも論じている。イスラエルでは軍は国民の信望を集める存在で、軍関係者の意見も重視される。
ここ1カ月で行われた世論調査によると、イラン攻撃に関して国民の意見はほぼ真っ二つ。ペレスの発言が示唆するように、指導層の分断も明らかになった。ネタニヤフはどこまで強硬姿勢を貫くことができるだろうか。
[2012年8月29日号掲載]