中国共産党の俊英はハーバードで育つ
民主化を後押しできるか
最も高い地位に上り詰めたのは李源潮(リー・ユアンチャオ)だ。ハーバード研修経験者で初めての中国共産党中央政治局員で、現在は共産党中央組織部長も務めている。さらに秋には、中央政治局常務委員に昇進する見通しだ。そうなれば、中国の最高指導部9人に名を連ねることになる。
ハーバードが中国の次世代リーダーに統治の仕方を教えることを問題視する人もいる。確かに、人権蹂躙を大規模かつ組織的に行っている国の専制統治体制を存続させるために、ハーバードが手を貸していることは否定できない。
しかし、アメリカ東海岸のキャンパスで学ぶ経験を通じて、中国のエリート官僚たちが専制支配以外の統治方法を知るのであれば、彼らを締め出すより意義がある。「これらのプログラムを通じて、世界の国々の統治の在り方を改善したい」と、ケネディ政治学大学院アッシュセンターのジュリアン・チャン所長は言う。
それに、欧米の有力大学にエリートを派遣していることからも分かるように、中国は世界の専制国家の中では、他国の統治手法の借用や応用に最も前向きな国だ。
近年も選挙や公聴会、世論調査、インターネットを利用した市議会審議の生中継など、民主国家の手法を取り入れて、統治方法の改善を試みてきた。
例えばムアマル・カダフィが権力を握っていた時代のリビアや、ロバート・ムガベ大統領のジンバブエが欧米の一流大学に幹部候補生の官僚を留学させることなど想像できるだろうか。
もちろん、中国が統治の質を改善しようとするのは、あくまでも共産党の支配を継続することが目的だ。それでも、まったく統治が改善されないよりはよほどましだろう。
私は昨年春、共産党員で政府の要職も務める北京大学の政治学者、兪可平(ユィ・コーピン)と会った。兪はハーバード留学経験者で、中国でもっと民主主義の実験を行うべきだと積極的に主張している。
当時は、中東・北アフリカ諸国に民衆革命が広がり、長期独裁体制が相次いで倒れた「アラブの春」の直後だった。兪は私にこう言った。「中東諸国の混乱から私たちが学ぶべき教訓は、公共サービスを改善すること、そして透明性と説明責任、社会正義を重んじることを通じて人々の政治参加を拡大することの必要性だ」
兪がこの考え方をハーバードで学んだのかどうかは分からない。しかし、もしそうだとすれば希望の持てる話だ。
[2012年6月13日号掲載]