最新記事

ロシア

第2次プーチン時代に隠れた「死角」

大統領への返り咲きを決めたプーチン。強権政治とコワモテ外交が復活しそうだが、思い通りに行くとは限らない

2012年3月5日(月)16時52分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)

強い指導者 民主主義より「秩序」を求めてプーチンを支持する国民はいまだに多いが(モスクワ、11年12月) Mikhail Voskresensky-Reuters

 ようこそ、新しい──けれど昔と変わらない──ロシアへ。2012年、ロシアの最高権力者ウラジーミル・プーチンが4年ぶりに大統領に返り咲く。

 00年に大統領に就いたプーチンは、3選を禁じる憲法の規定により、08年に大統領職をドミトリー・メドベージェフに禅譲し、自身は首相を務めていた。

 今回大統領に返り咲いたプーチンの統治は、24年まで続く可能性もある(大統領任期は今回から1期6年に延長される)。第2次プーチン時代はいったい、どのような時代になるのか。

 最近の言動から判断すると、プーチンのタカ派ナショナリストぶりは相変わらずだ。おまけに、欧米の経済がつまずくのを尻目に、潤沢なオイルマネーでロシア経済は絶好調。プーチンはますます自信を深めている。

 国内政策はますます専制的になる可能性が高い。この4年、メドベージェフはリベラル路線と改革を訴えてきたが、国民の人気はさっぱり。世論調査によれば、ロシア人は民主主義より「秩序」を圧倒的に求めている。

 もっとも、プーチンの人気にも陰りが見える。11年12月の下院選後に行われた世論調査によれば、プーチンの支持率は過去最低の51%にまで落ち込んだ。この選挙で浮上した不正問題をきっかけに、反プーチン派による抗議デモもロシア全土に拡大している。

うぬぼれと不満が蔓延する社会

 国民が不満を感じるのも無理はない。00年にプーチンが権力を握って以来、ロシア社会では汚職がエスカレートしてきた。非政府組織の「反汚職委員会」によれば、汚職で動く金は年間3000億ドル。GDP(国内総生産)の4分の1に相当する。

 ロシア国民はあらゆる国家機関に強い不信感を抱いているようだ。世論調査で警察を信用していないと答えた人は78%。役人が脱税していると考える人は、何と99%に達した。

 オイルマネーが生み出したうぬぼれと、国民の高まる不満。この2つの要素が混ざり合う危険な空気の中で、プーチンが大統領として帰ってくる。

 それに伴い、プーチン流の国際政治観も帰ってくるに違いない。ロシアが多極化する世界の1つの極となり、欧米の支配に対抗すべきだという考え方だ。

 その戦略の一環として、ロシア政府はかねてより、欧米との対抗上、中国との連携を模索してきた。両国が実際に足並みをそろえたケースもあった。最近では、国連でアメリカのシリア制裁案に反対する形で共同歩調を取った。

 とはいえ、すべての側面で利害が一致するとは限らない。エネルギー分野で、中国はロシアと協力していくつかの大型プロジェクトを進める一方で、中央アジアのエネルギー資源に対するロシアの独占を切り崩そうとし続けてきた。

 中国は11年11月、トルクメニスタンから輸入する天然ガスを年間650億立方メートルに大幅に増やすことで、トルクメニスタン政府と合意。トルクメニスタンとウズベキスタンとカザフスタンと中国を結ぶ天然ガスパイプラインの拡大も計画している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BYD工場建設作業員は「人身売買の犠牲者」=ブラジ

ワールド

中国の新型ステルス戦闘機か、尾翼のない2機の画像が

ビジネス

アングル:豪銀株、来年も堅調維持できるかは中銀次第

ワールド

24年スエズ運河通航収入は70億ドル減、紅海問題で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健康食品」もリスク要因に【研究者に聞く】
  • 4
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 5
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 8
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中