仏国債格下げでサルコジ「撃沈」
最近の世論調査では、回答者の68%が格下げはサルコジの失策だと答えた。格下げ前に行われた別の調査でも、サルコジの支持率は過去最低レベルの30%に落ち込んでいる。再選を目指す大統領の中で、歴史上最も不人気という調査結果もある。
大統領選の第1回投票まで100日の時点で、失業率は99年以降で最悪となり、さらに悪化し続けている。サルコジとオランドのどちらかを選ぶ形式の世論調査では、43%対57%でオランドに大きくリードされている。
再選の見通しに暗雲が立ち込めてきたサルコジにとって、もう1つの懸念材料は極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が今回の格下げを利用して支持を伸ばすことだ。反ユーロを掲げる保護主義者のルペンは、国民戦線の創設者だった父ジャンマリ・ルペン以上に大衆受けのいい政治家で、サルコジに幻滅した労働者階級の票を狙っている。
サルコジはドイツのアンゲラ・メルケル首相との「メルコジ」コンビでEUの意思決定をリードしているが、実際はメルケルの尻に敷かれている──そんな話が出るたびに、ルペンはフランスの国家主権を守れと遊説で訴えることができる。
サルコジは改革派を標榜しているが、市場の評価が高いのはむしろドイツのほう。フランスで遅れが目立つ抜本的な構造改革を着実に進めているからだ。ロンドンのシンクタンク、欧州改革センターは「EUの歴史上初めて、ドイツが明確なリーダーになり、フランスは2番手になった」と指摘した。
極右勢力が波乱要因に
今のところ与党UMPは、国家主権を叫ぶ国民戦線の政府批判に対抗するため、国民の分断を招きかねない反移民の愛国主義的主張を強めている。サルコジが当選した07年の大統領選では、この戦術が功を奏した。だが4月の第1回投票を想定して格下げ前に行われた世論調査では、サルコジとルペンの支持率の差は2%しかない(23・5%対21・5%)。
ルペンが大統領選に勝つ見込みはない。それでも02年、社会党候補のリオネル・ジョスパン首相を第1回投票で敗退に追い込んだ父親と同様の波乱要因になる可能性はある。S&Pがドイツ国債の格付けをトリプルAに据え置き、フランスとの扱いの差をはっきりさせたことを、ルペンも(市場も)決して見逃さないはずだ。
とはいえ、サルコジのライバルたちは他人の不幸を喜んでいる場合ではない。フランスの国家財政は74年からずっと赤字が続き、手厚過ぎる社会福祉制度の見直しには根強い抵抗がある。さらにフランスの銀行業界はギリシャやイタリアの債務に対し、大きなリスクを抱えている。こうした構造的な問題はフランスの将来をむしばみ、次の指導者の手を縛る。
5月の新大統領就任式に臨むのがサルコジにせよ別の誰かにせよ、問題は一朝一夕には解決できない。S&Pは13日の格下げ発表の際、次のように警告した。「今年または来年に再び格付けを引き下げる可能性は、少なくとも3分の1程度ある」
[2012年2月 1日号掲載]