ベルルスコーニ「裸の王様」の最期
政治の麻痺状態の末に
市場はイタリアの政治的危機の解消を「待っている」と、ポツダム大学(ドイツ)のエネルギー政策研究者ステファノ・カセルタノは主張する。米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)のイタリアに対する格付けは「Aプラス」のままだが、同社は先頃「イタリアの政治不安が(財政目標達成に向けた)計画の実行を妨げることがあれば、格下げ圧力にさらされる」と警告した。
イタリアの行く手に待つ巨大な問題の数々は、断固とした政治的・経済的決断なしには解決できない。1つ間違えば、救済の見込みはほぼなくなる。イタリアの名目債務は約1兆8000億ユーロ。5月に起きたギリシャ債務危機を受け、EUが設立に合意した7500億ユーロ規模の支援基金をもってしても、どうにもならない。
EUが加盟国に対し、債務残高の対GDP比を60%以下とするよう義務付けた場合、イタリアは大なたを振るうことを迫られる。国家の大きな目標を掲げ、実現を目指すのは政治家の役目だ。にもかかわらず、ベルルスコーニも議会もそんな姿勢はかけらも見せていない。
イタリア政治は麻痺状態だ。フィーニも野党の有力指導者も今のところ首相の座を狙える位置にはいない。対するベルルスコーニは、08年に成立した「現職の大統領、両院議長、首相は刑事訴追の対象にならない」という法律の合憲性をめぐり、憲法裁判所が12月中旬に出す予定の判決を待っている。
イタリアでは、早ければ来年の春に次の大きな選挙が行われる。ミラノ大学の社会学教授で世論調査を手掛けるレナート・マンハイマーによれば、ベルルスコーニが続投する可能性はあるものの、議会はこれまで以上に与野党が拮抗し、身動きの取れない状態になりそうだ。
そうした事態がもたらす結末は、一瞬にして都市が火砕流にのみ込まれたポンペイの最後ほどドラマチックではないかもしれない。だが指導者が危機的現状に目を向け、大胆な決断を下し、全面的に責任を取るようにならなければ、イタリア国民の未来はゆっくりとだが確実に葬られていくことになる。
[2010年11月24日号掲載]