イタリアを売春宿に変えた男
男女平等度は世界で74位
イタリアでは、どこを向いても女性の性的イメージが目に飛び込んでくる。屋外看板では女性が脚を広げて誘惑的なポーズを取り、ラジオからはあえぎ声が頻繁に流れてくる。テレビの女性キャスターは古代ローマの放蕩王・カリグラ帝も赤面するほど肌を露出している。
メディア王とイタリアの首相という2つの顔を持つベルルスコーニは、この国のメディアの風土形成に誰よりも影響力を振るってきた。70年代には自身が所有するテレビ局で、回答者が正解するたびに主婦が服を1枚ずつ脱いでいくという度し難いクイズ番組を放送させていた。今でも、好視聴率を挙げている番組の構成は当時と似たようなものだ。
「テレビの中の女性たちは、まるで生ハム扱い。従順なだけか、騒々しい売春婦のようか」だと言うのは、テレビ業界の性差別を批判するドキュメンタリーを制作したロレッラ・ザナルド。「ほかの国では男女平等が進められているのにイタリア女性はいつまでも従属的な役割に甘んじている」
その事実は統計にも表れている。世界経済フォーラムが発表した昨年の世界男女格差報告書によれば、女性の地位を示すランキングでイタリアは134カ国中、コロンビアやペルー、ルーマニアより下の74位だ(日本は94位)。この指標には男性の賃金との平等性、労働参加率、家庭内暴力の被害率などが含まれている。
もっと日常的なレベルでは、イタリア男性の95%は洗濯機を回したことがない。家事に費やす時間は女性が週に21時間なのに対して、男性はわずか4時間。「男が家事に対して非常にマッチョな態度を取るのはラテン諸国の伝統だ」と、ベルッチは言う。「女は家で子育てをし、重要な問題を決定するのは常に家長である男。昔も今も、これがイタリア人の常識だ」
ベルルスコーニの任期も、2013年には終わる。恥知らずなブンガブンガの時代に幕が下りる日も近い。「イタリアをベルルスコーニの手から取り戻し、歴史の流れを変える時が来た」と野党・民主党のフィノキアーノは言う。「これからは女が主役。今の世界で、私たち女にはすごいパワーがあるのだから」
[2011年4月27日号掲載]