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中東リビア崩壊が世界景気の起爆剤に?
カダフィが倒れれば原油価格が下がり、欧米の消費を大いに刺激するはず
期待大 反体制派の勝利は世界経済の勝利かも(8月22日、トリポリ) Esam Al-Fetori-Reuters
反体制派がリビアの首都トリポリをほぼ制圧し、ムアマル・カダフィ大佐の退陣を求める国際社会の圧力は高まる一方。40年以上に渡ってリビアを支配してきたカダフィ政権に、いよいよ最期の時が迫っているようだ。
後継者問題から欧米の政治経済に与える影響まで波紋の大きさは計り知れないが、中でも最も影響を受けるのは経済分野かもしれない。その原因はリビアに眠る原油だ。
リビアは世界17位の産油国であり、内紛が終結すれば生産高が急増すると期待する声もある。そうなれば原油価格が下落し、ひいては世界最大の経済大国アメリカにおけるガソリン価格も下がる──。つまり、カダフィ政権の崩壊は、アメリカ人に大型の減税と同じ効果をもたらすわけだ。
投資顧問会社カンバーランド・アドバイザーズのデービッド・コトク会長は、経済ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」で次のように論じている。
リビアの原油生産量は増加するだろう。そうなれば市場の原油価格は下落し、先物価格にもリビアの増産が織り込まれる。リビアの良質のスウィート原油の生産が完全に再開されて市場に流通するようになれば、原油価格の大幅な下落もあるかもしれない。これこそ、アメリカをはじめとする世界各国の経済が必要としている起爆剤だ。
原油価格は費税のような存在だ。わかりやすくするために、原油価格をガソリン価格に置き換え、その変動がアメリカの消費者に与える影響を試算してみよう。ガソリン価格が1ガロン当たり1セント下がると、アメリカ人がガソリン以外の消費に向けられる可処分所得は年間ざっと14億ドル費える。
経済にとっては非常に大きな刺激だ。ガソリン税率がアメリカよりずっと高いヨーロッパではそこまでの影響はないが、それでも効果は大きい。
ガソリン価格の引き下げが今ほど必要な時はない。先進国全体の経済が停滞する中、割高な原油価格という「税」負担が軽減されれば、願ってもない景気のけん引役となる。アメリカでは数カ月前に1ガロン当たり4ドル台だったガソリン価格が、2ドル台になる可能性もある。アメリカ経済にとっては前向きな変化であり、今伝えられている悲観的な経済予測には盛り込まれていない要素だ。
市場に流通するまでに1年はかかる
もちろん、こんなバラ色の未来を信じる人ばかりではない。
欧州の原油取引の指標となる「北海ブレント原油先物価格が下落したのは、単なる条件反射的な反応だと思う」とCNNマネーに語ったのは、原油取引に25年間携わり、石油価格に関する著書もあるダン・ディッカー。彼に言わせれば、リビア産の原油が市場に流通するのはずっと先の話だ。「リビアの石油が出回るまでに少なくとも1年はかかる」
グローバルエネルギー研究センター(ロンドン)の上級石油アナリスト、マヌーチェフル・タキンもCNNマネーに対し、リビアの原油生産再開は徐々にしか進まない可能性が高いと語っている。「リビアの石油生産インフラの状態は今もよくわかっていない。生産再開の足を引っ張る未知の要素があるかもしれない」
(GlobalPost.com特約)