最新記事

避妊

注射1本で効き目10年の男性用避妊法

2011年7月14日(木)17時02分
ジェイソン・オーバードーフ

 RISUGは近い将来、「ベイサルジェル」という名でアメリカ市場にも登場するかもしれない。男性向けのよりよい避妊法を求めて80年代から活動してきたサンフランシスコ在住の活動家エレイン・リスナーとグハが連携しているためだ。

「私は2005年に小さな財団を設立し、長年の夢だった新たな避妊法の開発に資金を投入した。財団には初期の研究を行うだけの資金しかないが、RISUGは非常に先進的な技術だ」と、リスナーは言う。「RISUGは何百人もの男性がすでに使用している、ホルモン剤を使わない唯一の方法だ。これを無視するのは犯罪に近い」

 RISUGがインドで商品化に向けた最終的なハードルをクリアしつつある現在、リスナーの財団はアメリカでの前臨床治験に向けた準備を進めている。アメリカで承認を受けるまでには400万ドルの資金が必要だが、早ければ来年にも治験が始まる見込みだという。

「効き過ぎる」薬を売りたくない製薬会社

 ただし、すべてが順調にいく保証はない。課題の一つは、マーケティングの観点で見ると、RISUGの効き目がよすぎること。「男性にとっては、安くて効果が長続きする方法が最高の避妊法だ。一方、製薬企業の株主からみれば、値段が高く、一時的な効果しか得られない方法こそ理想的だ」と、リスナーは指摘する。「製薬会社には安くて効果が長続きする方法を開発するインセンティブがない。男性たちが政府に強く要求しないかぎり、商品化は進まない」

 障壁を乗り越えるため、グハは避妊以外の付加価値を加えるための技術開発に励んでいる。狙っているのは、エイズと前立腺癌の治療効果。RISUGで使用するゲル状ポリマーが精管内でエイズウイルスを攻撃する可能性があり、HIV保有者の男性からパートナーや子供への感染を防げるかもしれない。

 (GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ、米に報復関税発動へ 大統領が閣僚に指示

ワールド

トランプ氏、メキシコ・カナダ・中国に4日から関税 

ワールド

ハマス、人質さらに3人解放 ガザ最南部ラファ検問所

ワールド

〔アングル〕カナダ・メキシコ産石油に関税、米消費者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    またか...アメリカの戦闘機「F-35」が制御不能に「パ…
  • 7
    幼い子供には「恐ろしすぎる」かも? アニメ映画『野…
  • 8
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 9
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 10
    ロシア石油施設・ミサイル倉庫に、ウクライナ軍がド…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 6
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中