注射1本で効き目10年の男性用避妊法
RISUGは近い将来、「ベイサルジェル」という名でアメリカ市場にも登場するかもしれない。男性向けのよりよい避妊法を求めて80年代から活動してきたサンフランシスコ在住の活動家エレイン・リスナーとグハが連携しているためだ。
「私は2005年に小さな財団を設立し、長年の夢だった新たな避妊法の開発に資金を投入した。財団には初期の研究を行うだけの資金しかないが、RISUGは非常に先進的な技術だ」と、リスナーは言う。「RISUGは何百人もの男性がすでに使用している、ホルモン剤を使わない唯一の方法だ。これを無視するのは犯罪に近い」
RISUGがインドで商品化に向けた最終的なハードルをクリアしつつある現在、リスナーの財団はアメリカでの前臨床治験に向けた準備を進めている。アメリカで承認を受けるまでには400万ドルの資金が必要だが、早ければ来年にも治験が始まる見込みだという。
「効き過ぎる」薬を売りたくない製薬会社
ただし、すべてが順調にいく保証はない。課題の一つは、マーケティングの観点で見ると、RISUGの効き目がよすぎること。「男性にとっては、安くて効果が長続きする方法が最高の避妊法だ。一方、製薬企業の株主からみれば、値段が高く、一時的な効果しか得られない方法こそ理想的だ」と、リスナーは指摘する。「製薬会社には安くて効果が長続きする方法を開発するインセンティブがない。男性たちが政府に強く要求しないかぎり、商品化は進まない」
障壁を乗り越えるため、グハは避妊以外の付加価値を加えるための技術開発に励んでいる。狙っているのは、エイズと前立腺癌の治療効果。RISUGで使用するゲル状ポリマーが精管内でエイズウイルスを攻撃する可能性があり、HIV保有者の男性からパートナーや子供への感染を防げるかもしれない。