ベトナムvs中国、南シナ海バトルの行方
南シナ海を巡って激化する中国と周辺国の対立は、もはや地域問題に留まらなくなってきた
わが領土 南沙諸島で建造中の桟橋の横を通るベトナムの船 Reuters
ベトナムと中国による南シナ海の領有権争いが激化するなか、中国のライバル陣営の頭には単純なアイデアが浮かんだようだ。それは、この海の名前を変えるというものだ。
ベトナムは、南シナ海という現在の呼び名を「東南アジア海」に変えようと各国や国際機関に働きかける署名運動を展開。呼び掛けは支持を広げている。フィリピンも別の案を考えている。「この海が南シナ海と呼ばれる限り、その名称が含まれる国(シナ=中国)のものだというメッセージが無意識に伝わるおそれがある」と、フィリピン軍広報官のミゲル・ホセ・ロドリゲス准将は言う。「我々フィリピン人はここを西フィリピン海と呼ぶべきだ」
領有権に関しては、名前が重要な意味を持つと考える人が増えている。石油や天然ガス、鉱物資源が豊富にあると思われるスプラトリー諸島及びパラセル群島は、中国と南シナ海周辺諸国の間で起きている領有権争いの中心地。ここも中国では南沙諸島および西沙群島と呼ばれているし、ベトナムも独自の呼称を持つ。
だが、この数週間中国と周辺国、さらに潜在的にはアメリカまで含んだ国々の間で高まっている緊張を考えれば、呼称は表面的な問題でしかない。ベトナムはこの海域での調査活動中に中国船から攻撃的な妨害活動を受けたとし、6月13日に9時間に及ぶ実弾演習を行った。中国はこれをベトナムによる領有権の侵害だと非難しつつ、妨害活動を行ったことは否定している。
ベトナムでは、これまで見られなかったような市民による反中国抗議デモが盛り上がっている。また、フィリピンの政治家たちは中国による「弱いものいじめ」に対抗すべく、中国産製品の全国的な不買運動を呼びかけている。
「中国の善意と寛容さが伝わっていない」
南シナ海では現在、6カ国が領海権や島々の領有権を主張している。なかでも中国はどの国より広範囲の領有権を主張し、今やその範囲の拡大さえ目論んでいるようだ。ベトナムやフィリピンとの最近の小競り合いは、地域的・世界的な問題において中国がますます攻撃的な姿勢を取るようになった表れだ、と専門家は指摘する。問題は状況をどう沈静化させるかと、どの段階でアメリカが関わってくる可能性があるかだ。
中国側は、対立は周辺国のせいだと言いたいようだ。政府系英字紙チャイナ・デイリーの論調もそうだ。だが同時に中国は、武力攻撃への不安を抑えるため地域内での「人気取り作戦」も展開。矛盾したメッセージを発している。
「アジア諸国と善隣関係を築く姿勢を守る中国は、領海を巡る争いによって近隣諸国とトラブルを抱えることを望んでいない」と、チャイナ・デイリーは述べる。「残念なことに、中国の善意と寛容さは近頃うまく伝わっていないようだ。フィリピンとベトナムは、この問題で再び中国を挑発する道を選んだ」