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東アジア朝鮮半島が恐れる口蹄疫の「二次災害」
口蹄疫の拡大が韓国と北朝鮮に大打撃を与えているが、今後もっと深刻な問題に発展する可能性も
ウイルスの猛威 ソウル郊外の農場で口蹄疫ワクチンを家畜に接種する獣医学校のボランティア(2010年12月) Reuters
朝鮮半島では、家畜の伝染病である口蹄疫が過去最悪の猛威を振るっている。
口蹄疫の特徴的な症状は発熱と、口やひづめの周囲に生じる水疱だ。感染しても多くの家畜は死を免れるが、衰弱し、ほかの家畜にウイルスを広める可能性は残る。このため北朝鮮と韓国の当局は感染の拡大を阻止するために、感染が確認された家畜の殺処分を行ってきた。
しかし皮肉なことに、この大量殺処分が両国の国民の懸念を一層増す結果となっている。
昨年11月の口蹄疫発生以来、合計300万頭以上の豚や牛が殺処分されている韓国では、雨の多い時期が近づくにつれてある懸念が高まっている。殺処分した家畜の死骸を埋めた約4600カ所に降り注ぐ雨水によって、汚染物質が河川に流出して感染を拡大させるのではないか、という懸念だ。
一部の報告によれば、大量の処分に追われた当局が家畜を生きたまま埋めたり、埋却用の穴を十分な深さまで掘らなかったり、きちんとビニールシートを敷かなかったケースもあるという。気温が高くなって死骸が腐り始めると、給水システムを汚染する可能性がある。
感染した家畜でも「もったいない」
「北朝鮮の問題はさらに深刻だ」と、韓国生命工学研究院のある獣医は言う。「北朝鮮は生活水準が極めて低い上に、衛生状態も悪い」
口蹄疫の発生は、ただでさえ食料不足に苦しむ北朝鮮の状況をさらに悪化させている。一般国民からは重要な食料源を、農業関係者からは、農地を耕したり作物を運搬したりするのに必要な「労働力」を奪っている。
口蹄疫は人間に感染することはまれだが、衣服や排泄物を通してウイルスが広まる可能性はあると、前出の獣医は語る。「感染した牛や豚の肉を食べた人間の排泄物から、感染が拡大する恐れがある」
しかし、そんな警告も北朝鮮にはほとんど役に立ちそうにない。北朝鮮では多くの国民が食料不足に苦しんでおり、彼らは、食べることができるなら家畜の病気など気にしないだろう。「切羽詰まれば、人は何だって食べるものだ」と、北朝鮮から中国に逃れたある女性は、韓国のラジオ「開かれた北朝鮮放送」で語った。
「ウイルスに汚染されていても肉は肉だ」と、その女性は言う。「殺した家畜をそのまま埋めるなんてもったいない、というのが北朝鮮国民の考え方だ。食べなければ、自分が死んでしまう」
[2011年3月 9日号掲載]