リビア空爆で窮地のベルルスコーニ
もっと問題視されているのは、リビアが持つイタリア企業の株式だ。イタリアの防衛航空宇宙関連企業フィンメッカニカ、自動車メーカーのフィアット、欧州第3位の銀行ウニクレディト・イタリアーノなどの株だ。「こうした資産は今凍結されているが、最終的には売りに出される必要があるだろう。特にウニクレディトが問題だ。リビアの持つ7・6%の株式は銀行の経営を変えかねないが、イタリアの投資家にそれを買うだけの資金はない」とボッリは言う。
イタリアの政界で、フランスがリビア空爆の指揮権を握ることに懸念が広がったのは、後に収束したリビアをフランスが経済的に支配することを恐れたからだ。ベルルスコーニはこうした警戒感にうまく対処していないと、カンピは言う。「彼は(空爆の)主導権を他国に渡し、カダフィが失脚したらフランスやイギリスが利益を得る。反対にカダフィが残れば、ベルルスコーニは同盟国(リビア)が必要とするときに背を向けたと非難されるだろう」。いずれにせよ、イタリアはリビア経済への影響力を失う可能性がある。
反移民を掲げる北部同盟の脅威
さらにリビア政変によってイタリアの海岸に移民が押し寄せれば、イタリア経済そのものも打撃を食うだろう。リビアから100キロ余りしか離れていないイタリアのランぺドゥーザ島は、既にチュニジアやエジプトからの移民であふれかえっている。イタリア本土へ移送されて入管当局で手続きが行われるのを待つ彼らの数は、地元住民の数を超えている。
これは反移民を掲げる北部同盟にとって、渡りに船。北部同盟党首ボッシの右腕であるロベルト・マローニ内相は、今年初めに北アフリカで蜂起が始まって以来、アフリカから「数百万の」移民が流入する危険性について言及してきた。いま崩壊寸前のリビアを見ても、彼の警告は重みを増す。
移民問題は5月に行われる地方選挙で最大の焦点になるだろう。ベルルスコーニは北部同盟の躍進と政権内における勢力拡大を恐れている。「北部同盟は既に、経済、安全保障、移民など中核となる政策で主導権を握っている。政権の軸となる政策だ」と、カンピは言う。
ある世論調査によれば、イタリア人10人のうち8人は、リビアに対して武力行使よりも外交的な解決策を望んでいる。セックススキャンダルや景気回復の遅れを指摘されて弱体化しているベルルスコーニが、さらに支持率を失うリスクを犯してNATOによるリビア空爆に従っている。今のところは、だが。