最新記事

革命史

中東革命を見誤る無邪気なアメリカ

アメリカは革命を反射的に支持するが、過去の多くの革命は恐怖政治を生んだ。中東にも新たな「暴力国家」が誕生しかねない

2011年3月2日(水)09時18分
ニーアル・ファーガソン(本誌コラムニスト、ハーバード大学歴史学部教授)

自由を求めて 独立革命と中東の民主化運動はまったく違う(リビア、反カダフィのデモ隊と元兵士たち) Suhaib Salem-Reuters

 アメリカ人は革命が大好きだ。そもそもアメリカはイギリスに独立宣言をたたきつけ、独立戦争を経て誕生した国だ。それだけにどんなに環境や結果が違おうと、外国の革命家を本能的に応援するきらいがある。

 裏を返せばそれは、歴史から学ばない慢性的な傾向ともいえる。現在北アフリカと中東を吹き荒れる革命の嵐が、歴史上の革命と同じような道をたどれば、アメリカの態度は大きな代償を伴う恐れがある。

 アメリカ人の革命好きは昔からだ。独立宣言の起草者であるベンジャミン・フランクリンとトマス・ジェファソンは、フランス革命を絶賛。ジェファソンは恐怖政治の生みの親であるジャコバン派まで擁護した。

 アメリカ人ジャーナリストのジョン・リードは、1917年のロシア革命を熱狂的な調子で伝えた。彼はレーニンを「偉大」と形容し、著書『世界をゆるがした十日間』には、レーニンが前書きを寄せている。

 やはりジャーナリストのエドガー・スノーは中国建国前から共産党に注目し、毛沢東を「農民のように飾り気がなく自然で、豊かなユーモアと素朴な笑いを愛する人物」と紹介した。後に毛沢東がしたことを知る者には、ゾッとするような描写だ。

 このようにアメリカ人は革命をたたえてきたが、その革命が怪しい方向に進み始めると途端に口をつぐんでしまう。だから現在アラブ諸国で広がる革命についても、絶賛する前に「非アメリカ的革命」に関する3つの事実を肝に銘じておくべきだ。...本文続く

──ここから先は3月2日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年3月9日号(カバー特集はリビアとカダフィ)をご覧ください。
<デジタル版のご購入はこちら
<iPad版、iPhone版のご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

他にも
■カバー特集「リビア破壊史とカダフィ後の絶望」
■「タブレットPC戦争、iPad2も圧勝か」
など、読み逃せない記事満載!

<最新号の目次はこちら

[2011年3月 9日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国、欧州EV関税支持国への投

ビジネス

中国10月製造業PMI、6カ月ぶりに50上回る 刺

ビジネス

再送-中国BYD、第3四半期は増収増益 売上高はテ

ビジネス

商船三井、通期の純利益予想を上方修正 営業益は小幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 5
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 6
    米供与戦車が「ロシア領内」で躍動...森に潜む敵に容…
  • 7
    娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェ…
  • 8
    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…
  • 9
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」…
  • 10
    衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとっ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 6
    渡り鳥の渡り、実は無駄...? 長年の定説覆す新研究
  • 7
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 8
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 8
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中