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リビア

「打倒カダフィ」血のシナリオ

2011年2月22日(火)17時44分
ダニエル・バイマン

影響力ゼロで何もできないアメリカ

 エジプトやチュニジア、そして反政府デモ真っ最中のバーレーンと違い、リビアに対するオバマ米政権の影響力は小さい。エジプト軍と、彼らに年間10億ドル以上も援助するアメリカは緊密な協力関係を築いていたから、オバマ政権はエジプトの出来事に意見ができた。アメリカはバーレーンともサウジアラビアとも親密な関係にある。しかしリビア政府に対してはほとんど影響がない。カードに使えるような援助活動や協力関係もない。

 これは反対に喜ぶべきことかもしれない。確かにリビアは重要な産油国で、国際テロ組織アルカイダなどを対象とするアメリカのテロ対策にも協力してきた。しかし数十年に及ぶ敵対関係とカダフィ体制の異様さのせいで、ここ10年ほどの関係改善には明らかに限界があったからだ。

 ムバラク後のエジプトや民主化したバーレーンがこれまで以上にアメリカを敵視するようになることを、米政治家は懸念している。一方、リビアの新体制は現体制以上にひどくはならないとの思いもある。しかしこれは、ダメな政権がさらにダメな政権に引き継がれることが多い中東においては危険な考えだ。しかもリビアの反政府勢力の結束の弱さは、多くの犠牲者を出す内戦に陥るリスクを高める。

 それでも、リビアがエジプトやチュニジアの後に続くことを望むのは正しいといえるだろう。今のところアメリカに出来る事は少ないけれど。

Slate.com特約)

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