空港爆破テロにロシアの意外な対応
モスクワでまたもや起きたテロ事件。指導層の対応や過去の事件と異なる点をまとめてみると――。
厳戒態勢 ドモジェドボ空港の外で対応に追われるロシア連邦保安局(FSB)の職員たち Denis Sinyakov-Reuters
ロシアのモスクワ近郊にあるドモジェドボ空港で1月24日、大規模な爆発があった。私がこれを書いているのは事件発生の数時間後で、爆破犯の詳細はまだ分かっていない。現時点で明らかになっているのは以下の点だ。
■これまでになく迅速な対応
ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は早くも、国民に向けたテレビ演説で被害者に対する哀悼の意を表明。26日開幕の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のためにスイスへ向かう予定を延期した。
以前ならロシアの指導者がこうした惨事に何らかの対応をみせるまで、もっと時間がかかった。1986年、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で放射能汚染事故が発生した際、ミハイル・ゴルバチョフ書記長が事故について言及したのは3週間もたってからだった。2000年の原子力潜水艦クルスクの沈没事故では、ウラジーミル・プーチン大統領(現首相)は休暇を直ちに切り上げず、難航する救出作業で他国の援助を受け入れたのも発生から5日目のことだった。
■過去の教訓を生かした情報提供
タチアナ・ゴリコワ保健社会発展相は、被害者とその家族が電話で心理・医療相談ができるホットラインを開設。ドモジェドボ空港のウェブサイトも、事故情報ホットラインの番号を掲載した。
死傷者数の情報も随時更新されている。現時点で少なくとも死者34人が確認されており、負傷者は140人以上、そのうち60人以上が入院した。家族なら、搬送先の病院も教えてもらえる。04年に北オセチア共和国ベスランで起きた学校占拠事件では、当局は最初から被害者の名前や人数などについて最新ではなかったり、つじつまの合わない情報を流していた。
■今回出てきた新しい問題
「空港から市内へ行くのに、タクシー運転手は2万ルーブル(約5万5000円)も要求している」――現場にいた人は、ツイッターでこう愚痴をこぼした。
空港周辺では、かなりの交通渋滞が発生。その対応に臨時の交通巡査が派遣されている。渋滞に怒ったドライバーたちが、救急車を通すことを拒否する事態も起きたためだ。