「変な天気=温暖化」でなくても大問題
もっとも最近の研究で、こうした異常気象のうち、少なくとも一部は地球温暖化と密接な関連があることが証明されてきた。米デューク大学の研究チームが発表した研究では、米南東部の夏の気候に温暖化の影響が見られるという。
この地域ではここ30年のうち、夏の湿度が異常に高かったか低かった年が11年にも及んでいる。さらに、それ以前の30年と比較すると「極端な降雨」の頻度が2倍に増えている。南東部をはじめ米東部全体、西ヨーロッパ、北アフリカの夏の気象は、北大西洋亜熱帯高気圧の影響を受ける。この高気圧のジオポテンシャル高度(単位質量当たりの空気の塊が持つ位置エネルギーによる高度)が過去60年間、10年で平均0.9メートル高くなっている。
簡単に言えば、高気圧の勢力が強まっているということだ。この高気圧に覆われる地域が西へと広がり、米東海岸に接近している。同時に南北方向にも勢力を拡大している。
北大西洋高気圧の勢力範囲が少し変わるだけでも、その影響は大きい。少し北に偏ると、米南東部では乾燥した夏になり、南に偏ると湿潤な夏になる。最近30年のうち11年で観測された異常は、この変化によるものだ。
デューク大学のチームは、北大西洋高気圧の発達をもたらした要因として自然界のあらゆる可能性を検討したが、説明がつかなかった。このため人間の活動による気候の変化がもたらした現象と考えるしかないという。
病気感染や紛争激化も
太平洋上で起こるエルニーニョ現象も大きな注目を集めている。水温の高い状態がほぼ5年置きに見られ、世界各地の気象に影響を及ぼす現象だが、最近は以前より頻発し、規模も大きくなっている。これは温暖化の進行で起こると予測されていたシナリオどおりの変化で、人為的な影響によるものと考えられている。
「地球気象の非正常化」によって起こると予測されるのは、異常気象だけではない。アメリカで観測されている風速の低下は、気候変動の影響によるものではないかと指摘されている。
米西部では夏が長くなり、冬の降雪が減っている。このため植物の生育期間は長くなっているが、森林の二酸化炭素吸収機能は低下すると予測されている。この地域の植物は水分の補給を、雨よりも冬の降雪に頼っているためだ。
米中西部の北寄りの地域にも変化が見える。米エール大学の研究チームによれば、ライム病の病原菌を媒介するマダニが気温の上昇によって大繁殖する恐れがある。
温暖化の進行に伴って、暑い地域で猛威を振るうマラリアの感染地域が拡大することも懸念されている。テキサス州などで感染例が報告されたことで警戒感が強まっているが、今のところは予防策が功を奏し、感染拡大は抑えられている。
もっと悲劇的な影響も考えられる。例えばアフリカでの紛争の勃発や激化だ。アフリカでは乏しい農業資源の奪い合いが紛争に発展しかねない。これまでも猛暑の夏が続いて農作物が不作になると、紛争が起こることが多かった。
暗い予測が的中するかどうかは分からない。だが、確かなことが1つある。個々の異常気象と温暖化の関係はまだ不確かであるにせよ、予測のつかない事態が今後さらに起こり得るということだ。
[2010年12月15日号掲載]