最新記事

朝鮮半島

ゲーツが抱く「日米韓同盟」構想

ゲーツ米国防長官の北東アジア歴訪で浮かび上がったのは日本、韓国、アメリカの同盟強化という構想だ

2011年1月14日(金)17時49分
ドナルド・カーク

仲人役 今週の「日韓ドラマ」の主役を努めたゲーツ(右、写真は昨年5月) Hyungwon Kang-Reuters

 敵の敵は味方なら、日本と韓国は今後ますます近付いていくだろう。その「日韓ドラマ」で今週、主役を演じたのはロバート・ゲーツ米国防長官だ。

 1月9日から中日韓を歴訪しているゲーツは、北東アジアを最近訪れた米高官の中では最も影響力の強い人物だろう。日米韓の3国同盟についてはっきり言及はしていないが、日韓それぞれとの同盟関係を強化すると明言。さらに、共通の敵である北朝鮮について強調することも忘れなかった。

 最初に訪れた北京では、北朝鮮はアメリカを脅かす存在になっていると強く主張。まもなく北朝鮮は、ハワイやアラスカが射程に入るミサイルを保有するだろうと語った。

 13日には東京で北沢俊美防衛相と会談。挑発的な態度をみせる北朝鮮は危険な存在で、このならず者国家を抑えるうえで日本が主導的役割を担うよう求めた。ゲーツは、自衛隊がロッキード・マーチン社の戦闘機を導入するよう提案もしてみせた。米軍高官が公にそうした売り込みをするのは初めてのことだ。

 アメリカ、日本、韓国の3国同盟までほのめかしながら、ゲーツが強調したのは「共通の利害」だ。北沢との会談でもこの点を繰り返し述べ、対北朝鮮で日米韓が結束する必要性を日本は認めるべきだと意思表示した。中国も同じような利害を有しているが、観点がまったく違うとゲーツは考えている。中国は北朝鮮にとって唯一の支援国。石油や食料の主な供給国であり、北朝鮮政府に直接働きかけることのできる唯一の国だからだ。

対話要求は北朝鮮のかく乱作戦

 ゲーツの旅は14日の韓国訪問で締めくくられる。これまで通り、北朝鮮からの攻撃があればアメリカは韓国を支持すると誓い、和解の可能性を排除しないことも示すだろう。

 これはゲーツにとっては賭けだ。というのも、北朝鮮が開発中とされるミサイルは最終的に、大量破壊兵器を搭載できるようになると考えられている。09年に北朝鮮が人工衛星を搭載したとされる長距離ミサイルの発射実験を行った際は、3200キロ以上の飛距離をみせて太平洋に墜落した。

 ゲーツと北沢が「戦略目標」を話し合った数日前には、北沢がソウルを訪れ、日韓の軍事協力を強めるような防衛協力協定を議論している。1つ目は、共同軍事演習などで物資の提供などを相互に行えるようにする物品役務相互提供協定。2つ目は軍事機密を共有するうえでの情報保護協定。後者はアメリカにとっては懸念材料となりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中