ゲーツが抱く「日米韓同盟」構想
日本では、沖縄県の普天間飛行場の移設問題をめぐるこう着状態に多くの国民が注目している。ゲーツは今回、「沖縄の心情をくみたい」と話し、政府と県の協議の推移を見守る姿勢をみせた。しかし昨年11月の北朝鮮による韓国・延坪島の砲撃事件を受けて、菅直人首相が普天間の県内移設にゴーサインを出すことはほぼ確実だろう。日本人は北朝鮮による拉致問題を忘れていない。韓国の哨戒艦を沈没させ、延坪島を砲撃した北朝鮮が次に何を仕掛けてくるのか懸念している。
沖縄問題は乗り越えられても、ゲーツが北朝鮮に足元をすくわれる可能性はある。日韓との同盟強化をうたうゲーツ発言の対極にあるもの──それは北京での6カ国協議や韓国・日本との二国間協議など、北朝鮮の対話要求だ。
これは北朝鮮が得意の交渉ゲームだろう。対する日米韓は「前にも聞いた話」と突き離しつつ、核開発を中止する真剣な意思表示を求めている。しかし北朝鮮側はいかなる妥協も示さないまま、軟化の姿勢を時折みせる。12日には、板門店にある韓国と北朝鮮の赤十字連絡所をつなぐ直通電話を再開させた。
中国の政府高官は、北朝鮮の対話要求を全面的に支持。来週、バラク・オバマ米大統領と会談する予定の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席は、その要求を改めて伝えると思われる。
地味さが不気味、金正恩の誕生日
対話を求める北朝鮮の狙いは何かと、専門家たちは首を傾げる。ほぼ間違いないのは厳しい冬を迎えて国民が苦しむ中、北朝鮮が食料と肥料を必要としていること。保守的な李明博(イ・ミョンバク)大統領以前の10年ほどは、韓国は毎年50万トン以上の支援物資を北朝鮮に送っていた。しかし李は、北朝鮮に核開発を中止するよう求め、これを停止している。
別の見方では、体調の悪い金正日(キム・ジョンイル)総書記が後継者とされる三男・正恩(ジョンウン)を心配し、緊張緩和を求めているのかもしれない。
金正恩は8日に、28歳か29歳(正確には不明)の誕生日を迎えた。しかし大々的な祝賀行事は行われず、ひっそりと過ぎた。「北朝鮮メディアは誕生日を報道しなかった」と、短波放送で北朝鮮向けにニュースを流しているハ・テクンは言う。「何かが起きるのではないか、とみんな心配している」