ロシアで暴れ出したネオナチ・フーリガン
人種差別が簡単にはびこる国
ロシア政界の親玉的存在であるウラジーミル・プーチン首相は、モスクワで起きた今回の暴動についてコメントしていない。ドミトリー・メドベージェフ大統領は12日夜、ツイッター上でコメントした。エルトン・ジョンのコンサートに出かけたことをツイートした直後のことだ。
「マネージ広場とこの国はすべて管理下にある」とメドベージェフは書いた。「すべての暴動の扇動者が裁かれることになる。1人残らず。全員だ」
メドベージェフは13日に連邦安全保障会議を召集し、こう警告した。「人種、民族、宗教に基づく憎しみや敵対心を煽る者たちは特に危険だ。彼らは国家の安定を脅かしている」「モスクワで最近起きた集団虐殺や人々への攻撃は、犯罪として裁かれ、責任者は罰を受けなければならない」
モスクワの暴動では約65人が拘束されたが、全員が24時間以内に釈放された。多くのヨーロッパ諸国と同様、ロシアでもサッカーファンと極右の民族主義者の関係は複雑で、極右の人間がサッカーファンにカネを払って暴力をふるわせることなどよくある話だ。
1カ月前に襲撃されたジャーナリスト、オレグ・カシンは、彼を襲ったのはおそらくフーリガンだったと証言している。フーリガンのほとんどはサッカーチームのファンクラブにたむろする若い男たち。過激グループにとって勧誘しやすい存在だ。
「彼らにリーダー格がいないことが唯一の救いだ」とコジェフニコワは言う。「彼らにリーダーが現れたら、途端にナチスのような反乱が起きるだろう」
ロシアは民族主義が色濃い国で、人種差別は国民の間でも、政府やメディアの間でもいとも簡単に許容される傾向にある。ロシアのあるタブロイド紙は、アフリカ人は「日焼けし過ぎだ」と書いたくらいだ。
それでも、NGOのSOVAセンターによれば、今年は暴力事件の発生率が低下しているという(ただロシアでは暴力が起きた件数を完全に把握することは難しいため統計は完全ではない)。今年になってから殺害された少数民族住民の数は去年の83人より少ない36人。怪我をした少数民族の数は去年の434人から340人に減った。
ロシアの人種暴動は、世界各国にとっても他人事ではすまなくなるかもしれない。暴動の9日前、ロシアは2018年サッカーW杯の開催権を勝ち取ったのだから。