欧州に戻ってきたフーリガンの悪夢
見えない「怒り」の中身
レッドスターのファンが忌み嫌うセルビア・サッカー協会の会長を辞めさせるために試合を中止させたかったと、一部の暴徒は言った。一方、セルビア代表のバスを襲撃したフーリガンは、レッドスター出身で最近パルチザンに移籍したゴールキーパーのウラジーミル・ストイコビッチを威嚇したかったようだ。
一部のサポーターは、直前にホームで格下のエストニアに1─3と惨敗した代表チームに怒っていただけなのかもしれない。
考えられる動機はほかにもある。この試合当日に、コソボの独立を支援したアメリカのヒラリー・クリントン国務長官がベオグラードを訪問したこと。ミロシェビッチの失脚が10年前のこの時期だったこと。セルビアの憲法裁判所は間もなく14のウルトラ・グループに解散命令を出すかどうかを審議する予定だったこと......。数日前のゲイ・パレード襲撃と何らかの関係があることも間違いない。
要するに今回の暴動は、政治的な怒りとスポーツ関係の怒りがない交ぜになり、混乱した形で爆発したものだった。怒れる極右のイメージと強く結び付いた騒ぎだったのは確かだが、そのイメージの正確な中身はほとんど見えてこない。
フーリガンは再びヨーロッパを席巻するのか? 試合の安全を確保するための最善の策は?こうした点は暴動の理由と同様、誰にとっても気になる問題だろう。唯一の例外は暴動を起こした当人たちだ。彼らの頭の中は、おそらく誰にも分からない。
[2010年11月 3日号掲載]