ビルマ「インチキ選挙」は内戦の序章
アジア諸国の大半は選挙結果を承認する見通しだが、アメリカとイギリス、EU(欧州連合)は非難声明を発表。オーストラリアを訪問中のヒラリー・クリントン米国務長官は、ビルマの総選挙によって「軍事政権の不正が再び露呈した」と語った。「胸が痛む。ビルマの人々はもっと恵まれた状況に値する」
新議会では4分の1の議席が軍人に割り当てられており、彼らが主要ポストを独占する見込みだ。しかも、立候補者の多くは元軍人。軍部は非常事態宣言を出して議会を閉鎖し、国を管理下に置く権利を有する。
少数民族が結集すれば相当な戦力に
軍事政権に長年虐げられてきた少数民族は、総選挙後に軍部によるゲリラ掃討作戦が展開されるのではないかと警戒している。11月上旬には6つの武装勢力の間で、軍部が新たな掃討作戦に乗り出した場合には協力して対抗するという合意が交わされた。実際、亡命ビルマ人がタイで創刊した雑誌『イラワジ川』によれば、ビルマ空軍は最近、ロシアのMi24攻撃ヘリを最大50台購入したという。
「武装勢力同士の連携が目立つ」と、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル・アジア太平洋部のドナ・ゲスト副部長は指摘する。「軍部が正統性を主張する新政権」は、武装勢力を弾圧する「必要性が増したと感じるかもしれない」。
少数民族の武装勢力には有能な戦士が揃っており、強力な戦力になる可能性を秘めていると、抑圧された民族を支援する非営利組織ワールドワイド・インパクト・ナウの会長を務める元米軍大佐ティム・ハイネマンは言う。「彼らの力を結集させれば相当の戦力となり、多くの問題を引き起こせる」
もっとも、45万人の兵士を擁する政府軍の規模には到底及ばない。「軍部は(武装勢力の)指導者を暗殺するかもしれない。そうなれば、武装勢力は頭を切り落とされたニワトリのように無力だ」
総選挙はビルマが変わる兆しだという楽観論もないわけではないが、少数民族にとってはさらなる暴力の予兆でしかない。「選挙なんて関係ない」と、ハイネマンは言う。「売春宿の上にハリボテの教会を建てるようなものだ」
(GlobalPost.com特約)