猛暑と火災があぶり出したロシアの奇怪
プーチンも今や犠牲者
多くの場合は助けを求める手段すらない。あるブロガーが、自分の村では昔は災害時に半鐘を鳴らしていたが、今はその半鐘すらないと、ウラジーミル・プーチン首相に訴えた。何を思ったのか、プーチンは当局に命じてその村に半鐘を設置させた。
どうやらプーチンにも、国民を安心させ、国民に役立つ情報を提供する妙案はないらしい。この男はロシアの「情報干ばつ」を引き起こした張本人だが、今はその犠牲者の1人でもある。中央政府にも十分な情報は集まらないから、適切な避難勧告を出せず、消火活動の指揮もできない。火災の範囲すら把握できない。
ニューヨークにいるジャーナリスト仲間からロシアの事情を聞かれても、この頃は「分からない」と答えることが多い。いいかげんな奴と思われるかもしれないが、ロシアで何が起きているかは、ロシアにいても知りようがない。
目の前で火の手が上がり、あるいは何かが爆発するまで、スモッグに視界を閉ざされた私たちは口も閉ざして耐えるのみだ。
(Slate.com特約)
[2010年8月25日号掲載]