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米露関係名を捨て実を取るオバマ流リセットの勝算
オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領の首脳会談が6月24日、ホワイトハウスで行われた。現在の米ロ関係は、95年のクリントン大統領のモスクワ訪問以来の雪解けムード。両国は今回の会談で、対イラン制裁やヨーロッパのミサイル防衛構想、NATO東方拡大の事実上の中止など、多くの重要課題で合意に達した。
とはいえアメリカばかりが譲歩している印象が残る。ポーランドとチェコへのミサイル配備は中止。親米国のグルジアをロシアが占領していることも、ほぼ既成事実扱い。ロシア国内の集会の自由に対する締め付け強化や、服役中の石油富豪ミハイル・ホドルコフスキーの新たな裁判についても沈黙を守っている。
ロシアは、アフガニスタンでの軍事作戦に不可欠なキルギスの米空軍基地を閉鎖させようとするのをやめた。4月には新しい戦略兵器削減条約(START)に調印。5月には(手ぬるい内容ながら)対イラン制裁に合意したが、アメリカの見返りのほうが少ない。
アメリカがこれだけ犠牲を払うのは、永続的な真の平和という配当を手にするため。ロシアの利害をベネズエラやイラン、シリアといった「ならず者国家」でなく、欧米に近づけようというわけだ。
24日の会談は外交よりビジネスの話題が中心だった。アメリカにしてみれば、ロシアが欧米経済に組み込まれるほど、プーチン時代の対決姿勢に逆戻りする可能性は減る。ロシアも欧米の資本とノウハウを手に入れて、瀕死の経済を立て直そうとしている。
23日にカリフォルニア州のシリコンバレーを訪れたメドベージェフは、ロシア版シリコンバレー計画への投資を呼び掛けた。ロシア国営企業が総額40億謖相当のボーイング737型機50機を購入することも明らかになった。
米ロの蜜月が結婚に発展すれば、ロシアにはメリットが大きい。米議会で審議中の民生用原子力協力協定はロシアに巨額の利益をもたらすし、93年以来、歴代米大統領がロシアの前にぶら下げてきた「WTO加盟」も、オバマ大統領は全面支持している。
賭けには違いない。だがブッシュ前大統領時代の「正面衝突」政策は、ひどく逆効果だった。オバマ流のリセットは、ロシアを味方にするには一番かもしれない。
[2010年7月 7日号掲載]