アルカイダCFOの「高い」資格要件
国際テロ組織のナンバー3で最高財務責任者だったマスリが死亡。後継者に課せられる職務とは
後釜募集中 米軍の攻撃で死亡したアルカイダの金庫番、サイド・アル・マスリ Reuters
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メディアはアルカイダの最高幹部の1人、ムスタファ・アブ・アルヤジド(別名サイド・アル・マスリ)の死を伝えている。パキスタン領内で米軍無人機の攻撃を受けたという。
マスリはアルカイダの創設メンバーの1人で、序列はウサマ・ビンラディンとアイマン・アル・ザワヒリに続く第3位。企業で言う最高財務責任者(CFO)と最高執行責任者(COO)に相当する立場にあると言われてきた。
では、テロ組織のCFOとは実際にどんな仕事をするのだろう?
一言で言えば「何でも屋」だ。アルカイダは9・11テロ前の最盛期(当時は組織内にマスリ率いる財政委員会が存在した)に比べ、中央集権的な色はかなり薄れている。
だが、組織の運営は今も多くの面で企業に似ている。もっと具体的に言えば、アルカイダはコンビニエンスストアやファストフード店などのフランチャイズで言う「本部」のような存在だ。
アルカイダの傘下に入ることを希望する組織は、かなり厳しい審査を受けなければならない。自らテロを実行し、公の場でアルカイダの幹部をほめ称え、自分たちのイデオロギーを「本部」のものに合わせなければならないのだ。
「フランチャイズ」の中心人物
たとえばアルジェリアのイスラム武装組織「布教と聖戦のためのサラフ主義集団」がアルカイダへの加入に向けて動き出したのは06年のこと。国内のイスラム過激派に金銭的、物質的な援助を行なったかいあって、この組織はザワヒリから正式に加入を認められた(今ではこの組織は『イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ』という名で知られている)。
また「フランチャイズ」への加入を希望する組織は、アルカイダに金や武器などを上納するのが「契約条件」となっている。マスリはこうした交渉の取りまとめ役だったと思われる。
アメリカのシンクタンク、外交評議会によればテロ組織は寄付や麻薬取引、それにマネーロンダリングから活動資金を得ている。また9・11テロに関する独立調査委員会によれば、アルカイダの資金の大半は寄付によってまかなわれているという。
寄付は個人からのものもあれば慈善団体(武装組織の運営だったり、まともな団体がだまされて......という場合もある)を経由して流れ込んだものもある。
マスリは資金集めに関して組織の表の顔として活躍した。09年6月に公開されたビデオで彼は、武器などの物資の不足により思うような活動ができないと嘆き、志を同じくするテロリストに対しアルカイダへの寄付を呼びかけた。
そしてマスリが集めた金は9・11テロのような武装闘争に使われた。タリバンのアヘン取引のほか、サハラ砂漠を舞台にした武器や麻薬の密輸もアルカイダの資金源になっていると言われている。
資金繰りと暗殺、両方が心配
マスリはアルカイダの口座の金の出入りを管理する立場にもあっただろう。ただしテロ組織は金を貯めたり送金したりするのに銀行やクレジットカードを使うことはできない。
その代わりアルカイダが利用しているのは「ハワラ」と呼ばれる非正規の金融システムだ。送金仲介人のネットワークで当局の監視も受けないし、銀行のようなきちんとした取引記録も残さないから都合がいいのだ。
9・11テロの後、普通の銀行に預けられていた資産が差し押さえられたことも、アルカイダが地下金融を利用するようになった理由の1つだった。
時に人事管理もCFOの重要な職務となる。マスリは工作員の移動を助けるために、金や偽造パスポートなどを渡したりもしたはずだ。