ヨーロッパに忍び寄るネオ排外主義
ヨーロッパの主流派政党は、ユダヤ人やイスラム教徒などマイノリティーへの攻撃の高まりが目立たないように努めてきた。だがフィデスは、ヨーロッパ全域にまたがる「欧州人民民主党」に加盟している。アンゲラ・メルケル独首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)や、ニコラ・サルコジ仏大統領の国民運動連合(UMP)をはじめ、スウェーデン、イタリアなどの政権与党も加盟する団体だ。
英主要政党にまで拡大
10年前にオーストリアで極右の自由党党首イェルク・ハイダー(当時)が連立政権入りを果たした際は、EU(欧州連合)諸国が一斉に非難の声を上げた。しかしフィデスは、ハイダーでさえ口にしなかった過激な表現で「ユダヤ資本」を攻撃し、有権者に高く支持されている。
急進的ポピュリズムは、もはやヨーロッパの政治における少数派ではなくなった。5月6日に総選挙を控えるイギリスでは、すべての主要政党が有権者の排外意識に訴えるような主張を展開している。国外在住のイギリス人に同じような差別的発言が向けられたら、決して容赦しないはずなのに。
現在の状況が第二次大戦前と同じだというのは言い過ぎだろう。ファシズムは死に、よみがえることはない。しかし、新たな不寛容の政治がヨーロッパで育っているのは事実だ。それにどう対処すべきかは誰にも分からない。
[2010年4月28日号掲載]