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アジア歴訪クリントンの「本音」

2010年5月21日(金)18時26分
ジョシュ・ローギン

 戦略・経済対話の成果は期待できない。主な議題は両国の支持が得やすく容易に達成できそうなエネルギー安全保障になるだろう。オバマ政権は世界経済のバランスの見直しという大規模な問題に取り組みたい考えだが、現時点では優先議題にしていない。おそらくアメリカ経済の脆弱性が原因だ。クリントンはイラン制裁に中国も参加するよう強力に働きかけるだろう。

韓国:クリントンが日程の最後に韓国を訪問するまでに、沈没事件の状況は変わっているだろう。韓国は貿易の制限や北朝鮮国内の開城工業団地の閉鎖など、一連の北朝鮮への単独制裁を発表しているかもしれない。アメリカはそれまでに、韓国が求める具体的で拘束力のある安保理決議や議長声明に同調するかを決断する必要がある。

 クリントンにとって重要なのは、韓国と協調して問題に取り組んでいることを示すこと。情報機関の協力体制の改善や、潜水艦探知機能の委譲がこれに当たる。

 6カ国協議は以前から生命維持装置につながれた瀕死の状態で、北朝鮮は現在その電源を引き抜こうとしている。だがオバマ政権が協議の破綻を宣言することはできない。それこそまさに北朝鮮が望んでいることだからだ。

 アメリカや同盟国の働きかけで国連がどう動こうと、北朝鮮には何の影響もないだろう。北朝鮮はアメリカが軍事的な報復に出ることはないと安心している。事態の緊迫すると、真っ先にソウルが危険にさらされるからだ。

「彼らはアメリカの動きをじっと見て、次にどう出るつもりなのかを考えている」と、元大使で韓国経済研究院の代表でもあるジャック・プリチャードは言う。北朝鮮が国境近くで攻撃を行うのは今に始まったことではない。「これまで彼らは代償を払わずに済んできた。おそらくこれからも報いを受けずにすませるだろう。(沈没事件の)代償は小さい」と、プリチャードは言う。

Reprinted with permission from "The Cable", 08/04/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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