クレッグ自民党が英政界をぶっ壊す
2大政党の不人気で支持率を伸ばした自由民主党が、2大政党制と小選挙区制度に終止符を打つ?
キングメーカー クレッグ旋風で、あり得ないことが起こりそう(写真は4月22日、2度目のテレビ討論を待つ3党首。左からクレッグ、キャメロン、ブラウン) Reuters
問題:アメリカ政治の新しいうねりとなっている保守派連合ティーパーティーの動きをイギリスに置き換えるとどうなるか。それも名門私立校に学び、オーストリアでスキーのインストラクターをしていたこともある人物に置き換えると?
答えは、イギリス自由民主党のニック・クレッグ党首になる、だ。
彼はここ数十年のイギリスにおける、有権者の最大の反乱の恩恵を受けることになりそうだ。
イギリスの自由民主党は、歴史的にはちっぽけな第3の党にすぎなかった。自由党と社会民主党が合併して自由民主党が誕生したのは80年代末。労働党はマルクス主義に近い考えに固執し、保守党はマーガレット・サッチャー首相そのものっだった時代だ。両党の両極端なイデオロギーの間には大きな空白地帯があり、そこに飛び込んだのが自民党だった。
その後、自民党は何度か奇妙な転機を迎える。突拍子もない地域的な理念を支持したり、左派と右派の間でふらふらと揺れ動いて、しばしば同党の政治志向だったはずの中道から外れた。
だがそうした漂流の時代を経て、クレッグはようやく自民党の役割を見つけた。イデオロギーではなく、選択肢を提示するのである。労働党にうんざりしている、かといって保守党には投票したくない、2大政党制には飽き飽きしている。それなら自民党に投票を、というわけだ。
もちろんクレッグはあからさまにそんなことは言わない。だが5月6日の総選挙を前に行われたイギリス初のテレビ党首討論で、有権者がクレッグのパフォーマンスから読み取ったのはそのメッセージだった。
テレビ討論は、それ自体が「プチ改革」といえる。これまでイギリスの政治家がアメリカ式の討論を行うことはなかった。彼らは演壇に立ち、選ばれた問題について選ばれた人々の前で議論することを避けてきた。重要な議論は議会で行うと伝統的に決まっていたからだ。