最新記事

オリンピック

五輪メダル数は経済学に聞け!

2010年2月15日(月)17時22分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

 この獲得メダル数予測に、どの程度信憑性があるのか。過去数回のオリンピックの結果を見ると、ジョンソンのモデルが弾き出した予測と実際の国別の獲得メダル数の間には、94%の相関関係が見て取れる(金メダルの獲得数では約88%)。

 ジョンソンの手法がスポーツ専門テレビ局やスポーツ雑誌の予想と違うのは、どの競技でどの選手がメダルを取るか検討しなくても結論が導き出せることだ。「おおむね、大きくて、豊かで、寒い国ほどたくさんメダルを取る」とジョンソンは言う。

冬季大会の予測が難しい理由

 もちろん、経済学的モデルも完璧ではない。それは、08年の金融危機でアメリカの金融機関が思い知らされたとおりだ。

 それに、冬のオリンピック特有の問題もある。第1に、冬季オリンピックは夏季より開催競技数が格段に少ないので、誤差が生じやすい(競技数は、夏季が302に対して冬季は86に過ぎない)。

 第2に、冬季オリンピックは夏季に比べて個人競技の割合が大きい。その結果、国別の獲得メダル数は一握りのスター選手のプレーに大きく左右される。有力選手が怪我で出場できなくなれば、その国のメダル数が大幅に減る可能性もある。それに、氷上や雪上で行われるウィンタースポーツでは、不慮のアクシデントのせいで有望選手が最下位に沈むことも珍しくない。

 最後にもう1点。カナダに地の利があるのは確かだが、その点ではアメリカも準開催国だ。バンクーバーは、アメリカとカナダの国境から50キロほどしか離れていない。会場にはアメリカから大勢のファンが駆け付け、アメリカ選手に声援を送る。しかもアメリカの選手にとっては時差もないし、気候の違いもほとんどない。

 2週間後に、ジョンソン教授の予測がどのくらい当たっているか確めるのが楽しみだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カザフスタンで旅客機墜落、搭乗72人中12人生存

ワールド

ロシア産天然ガスの欧州向け輸出、今年は18─20%

ビジネス

日経平均は小幅反発、クリスマスや年末で見送りムード

ビジネス

日産、11月世界販売1.3%減で8カ月連続マイナス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 5
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 8
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 9
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中