最新記事

テロ

アルカイダ、次は白人女性の自爆テロか

アメリカの治安当局が恐れる新たな脅威は、国境を簡単に越えられる欧米系の女テロリストだ

2010年1月26日(火)18時19分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

現実の脅威 イラクの都市バクバで、爆薬を仕込んだベストを脱がされる10代の女性。彼女はテロを実行せずに投降した(08年8月) Reuters

 国際テロ組織アルカイダとその関連組織は、テロを警戒するアメリカと同盟国の警備を突破する手段として、女性による自爆テロを検討しているかもしれないと、複数の米治安当局者が明かした。すでに実行計画を練っている可能性すらあるという。

 アルカイダが、内外にあるアメリカの標的に対して女テロリストを使った攻撃を企てる可能性は現実のものであり、次の主流にもなりかねないと、テロの最新の脅威についての報告や分析に詳しい3人の米政府関係者は言う。

 3人のうち1人によれば、昨年のクリスマスにデトロイト行きの旅客機で爆破テロ未遂事件があった後、デトロイトの捜査当局は女テロリストが続けて攻撃を仕掛けてくるのをとりわけ警戒しているという。

 米ABCテレビも先週、アメリカの法執行機関が女性による自爆テロを警戒するよう注意喚起を受けたと報じた。ABCがコメントを引用したある政府関係者によれば、危険と見られる女性のうち少なくとも2人はイエメンのアルカイダとつながりがあるとみられ、見た目はアラブ系には見えず西側のパスポートを使っているかもしれないという。

 本誌の取材に応じた別の政府関係者によれば、具体的な日時や場所や手段を特定した上で女性テロリストの攻撃が近いと警告している情報機関はないという。

 だが、米機爆破未遂事件を起こしたウマル・フアルーク・アブドゥルムタラブが金属を使わない爆破装置を下着に隠してまんまと飛行機に持ち込んだことは、彼を訓練したイエメンのアルカイダの創意工夫と技術革新のレベルの高さを示している。

 だとすれば、ウサマ・ビンラディンや彼の信奉者たちが今ごろ西側の裏をかくためにどんな突飛な手段を考えていてもおかしくないし、女性の自爆テロという戦術も可能性として無視できないと、先の政府関係者は言う。

欧米人のリクルートも順調そう

 また別の当局者は、「敵は新しく創造性に富んだ方法で我々の防御に挑み続けるだろう」と指摘。そして、イスラム教過激派は過去にも女性の自爆テロリストを使ったことがあると付け加えた。

 08年のテロ動向に関する米政府の調査によれば、世界の自爆テロの9%、イラクでの15%が女性によるものだった。専門家によれば、女性による自爆テロは中東からロシアまで広い範囲で行われてきたという。03年〜04年にはチェチェンで「ブラック・ウィドー(黒い寡婦)」と呼ばれる女性たちが、地下鉄や飛行機の含む多くのロシアの標的に対し自爆テロを実行したとみられている。

 特に欧米の捜査官を悩ませているのは、テロ組織が自爆テロのために欧米人の女性を雇うことに成功している可能性があることだ。当局者たちが例に挙げたあるベルギー人女性は、イスラム過激派と結婚してイスラム教に改宗。そして05年、バグダッドでの自爆攻撃で爆死した。

 欧米の当局者にとって、西欧系の人種と欧米の国籍を持つ女性テロリストは悪夢の存在だ。アメリカでもヨーロッパでも国境を簡単に通過できるし、欧米の情報機関の監視リストにも載っていないのだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米テキサス州はしかで死者、ワクチン懐疑派

ワールド

アングル:中国、消費拡大には構造改革が必須 全人代

ワールド

再送米ウクライナ首脳会談決裂、激しい口論 鉱物協定

ワールド

〔情報BOX〕米ウクライナ首脳衝突、欧州首脳らの反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    「売れる車がない」日産は鴻海の傘下に? ホンダも今…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中