最新記事

世界経済

中国の世紀がまだ来ない理由

2010年1月20日(水)15時14分
ミンシン・ペイ(米クレアモント・マッケナ大学教授、中国専門家)

 最も懸念されるのは、豊かな資源がある内陸部で少数民族の分離独立運動が再燃していることだ。09年7月に新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた暴動では、200人近くが死亡し、1000人以上が負傷した。過去30年で最悪の民族暴動である。

 チベット問題もくすぶり続けている。ウイグル人も依然として中央政府の統治に反旗を翻している。指導部の目は今後しばらく、外よりも内に向かざるを得ない。

 こうした側面を考えていくと、中国指導部が金融危機による最悪の影響を免れたことに安堵しても、手放しで喜べない理由が見えてくる。確かに今回の危機で、中国はライバル諸国(特にアメリカや日本)との差を縮めた。「中国は強くなった」と国民が信じるなかで、中国の指導者は国際舞台でスポットライトを浴びる姿を国民に見せることもできている。

 だが、指導部は知っている。目前に数々の厳しい問題が立ちはだかっていることも、この先何が起こるか分からないということも。それは外国人も同じように理解すべきことだろう。

 中国は今回の危機における「最大の勝者」と思われていることを喜んでいる。だが実際には、「傷の浅かった敗者」という程度のものだ。

 そして、もちろん中国はそれを知っている。

[2009年12月30日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ヒズボラ指導者殺害の正当性主張 イラン

ビジネス

アングル:AIで急増する米国の電力需要、原発活用の

ワールド

焦点:中国が定年引き上げ、それでも年金問題解決には

ワールド

イスラエル、空爆でヒズボラ指導者ナスララ師殺害 イ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
2024年10月 1日号(9/24発売)

被災地支援を続ける羽生結弦が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッション」に世界が驚いた瞬間が再び話題に
  • 2
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 5
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 6
    南洋のシャチが、強烈な一撃でイルカを「空中に弾き…
  • 7
    メーガン妃が編集したヴォーグ誌「15人の女性をフィ…
  • 8
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
  • 9
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 10
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感...世界が魅了された5つの瞬間
  • 3
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断された手足と戦場の記憶
  • 4
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 5
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 6
    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…
  • 7
    メーガン妃に大打撃、「因縁の一件」とは?...キャサ…
  • 8
    先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない…
  • 9
    50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川の…
  • 10
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 7
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 8
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 9
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 10
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中