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共産党の意に反して「報道の自由」が加速

2010年1月8日(金)14時42分
長岡義博

 これまで中国では、共産党が意向にそぐわない報道をした報道機関を発禁処分にしてきた。だが昨年夏以降、当局の人権侵害批判や、政府発表と異なるスクープ記事を掲載するメディアが相次いでいる。

 英字紙チャイナ・デイリーは7月、メラミン混入ミルク事件で被害者救済活動をした民間組織に対し当局が不当に閉鎖を命じたと報道。8月には他のメディアが報じないなか、四川大地震で死んだ子供の数を特定しようとして起訴された人権活動家の記事を掲載した。

 11月には新華社系の週刊誌「瞭望新聞週刊」が、陳情住民を人権無視で収容するヤミ監獄を暴く記事を、12月には人民日報系英字紙グローバル・タイムスと週刊紙の南方週末が、以前は当局の発表をそのまま掲載するだけだった共産党指導部人事の予測記事を載せた。

 市場経済の広がりに伴い、中国の新聞と雑誌の数は計1万2000に増加。中国政府は昨年4月、新聞社や出版社に経営合理化と統廃合を迫る指針を公表し、メディアが生き残りのため記事の中身でしのぎを削る傾向が強まっている。

 「『市場の自由』を得たことで、中国メディアの『報道の自由』は実はかなりのところまで進んでいる」と、中国人ジャーナリストの陳言は言う。

[2010年1月13日号掲載]

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