コペンハーゲン会議が残した3つの教訓
交渉相手を利するオバマ外交
最後に、コペンハーゲンでの対応から、オバマの外交スタイルや政治への姿勢全般が浮き彫りになったという点を指摘しておきたい。
雄弁家のオバマは野心的な目標を設定し、短い期限を設ける(大統領一期目にパレスチナ問題で2国家共存を実現したいと語ったのを思い出してほしい)。そして、そうした高尚な目標が(当然)実現できないとわかった時点で可能な選択肢に飛びつき、「前進する」必要性を説く。欠陥だらけの医療保険改革案や写真映り重視の中東外交、妥協ばかりのアフガニスタン政策がいい例だ。
「コップの水が半分残っている」という前向きな解釈をすれば、COP15の結末は完全なこう着状態を回避し、オバマが完全かつ明白に失敗したという印象(事実かもしれない)を残さない一助となったといえる。
医療保険改革をみればわかるように、何もしないよりはマシという程度の改革は実際にある。温暖化問題の複雑さや、三権分立の制約によってオバマが大胆な行動を取れない事実、米政府内にある複数の拒否権システムなどを考えあわせれば、今回の合意は「最もマシ」な落とし所なのかもしれない。
だが「コップの水が半分しか残っていない」という解釈をすれば、別のストーリーが見えてくる。オバマは高尚な目標をあまりに多く掲げ、メンツを保つために取引に応じる意欲をあからさまに示してしまった。
おかげで、オバマは絶対に交渉の席を立たないという印象を敵対勢力に与え、時間稼ぎをして交渉をできるだけ引き伸ばせば、より有利な条件を引き出せると思わせてしまった。「敵対勢力」が米共和党であれ、中国であれ、アフガニスタンのカルザイ政権であれ、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相であれ、イランであれ、これは重大な問題だ。
さらに困ったことに、オバマには交渉の途中で介入する癖がある。シカゴのオリンピック招致活動と同じく、COP15でもその傾向は見られた。温暖化問題がそれほど重要ならもっと長期間コペンハーゲンに滞在すべきだったし、合意に達しないことがわかっていたのなら、そもそもコペンハーゲンに行くべきではなかった。
もっとも、私が何より懸念しているのは、オバマが不利な選択肢のなかから最善を尽くしたにもかかわらず、いい結果には程遠いということだ。
Reprinted with permission from Stephen M. Walt's blog, 22/12/2009.©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.