暴走するエルサレム市長は「バットマン」
「聖書テーマパーク」も
市長になってからは、まるでイスラエルの「バットマン」気取りで振る舞っている。街を救うために戦う若き大富豪、というわけだ。自宅から職場までジョギングし、途中で街角のゴミを写真に撮ったりもする。尊敬する人物は、前ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ。彼から「細部の詰めが大事」なことを教わったし、犯罪対策での「非常に押しの強い」手法も気に入ったという。
しかし、エルサレムはニューヨークとは違う。ジュリアーニ流の強引な手法を持ち込めば、ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の聖地が血に染まりかねない。特に旧市街と神殿の丘は、常に一触即発の状態だ。00年9月には、後にイスラエル首相となるアリエル・シャロンがここを訪れ、第2次インティファダ(反イスラエル闘争)を招いている。
観光客誘致の取り組みの一環として、バルカットは旧市街のすぐ南にある古代の「ダビデの町」周辺に、一種の聖書テーマパークを建てようとしている。
いいビジネスになるとバルカットは言うが、市内のアラブ系人口の伸びがユダヤ系を上回っていることに話が及ぶと、本音が出た。「エルサレム(の人口)を均衡させ、ユダヤの町にし、世界におけるユダヤ人の首都にするのが私の役目だ」。米中東特使にとっては、聞きたくない言葉だ。
[2009年9月30日号掲載]