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アハマディネジャド再選に黄信号

2009年6月5日(金)16時20分
マジアル・バハリ(テヘラン支局)

 イスラエルや西側諸国に対するアハマディネジャドの姿勢については、アリも今も支持している。ホロコーストの存在を疑問視する発言も評価している。

 なのになぜ今回はアハマディネジャドに投票しないのか。「経済と、国民を欺く恥ずべき振る舞い」のせいだと、アリは言う。

 現金をばらまくアハマディネジャドの政治手法と世界的な経済危機があいまって、イランは過去1年間で前例がないほどのインフレに陥った。だが政府のインフレ対策といえば、政府職員の給与を引き上げ、大統領の演説に集まった人々にカネを配ることくらい。アリに言わせれば、国民をホームレスのように扱い、カネを配る手法こそ、アハマディジャドの経済政策の最大の問題だ。

シーア派の神経を逆なで

 ただし、アリがアハマディネジャドに投票しない最大の理由は経済ではない。「正直言うと、気が変わったのは2週間前。アハマディネジャドがムサビを、イマーム・フセインの敵に例えたことが原因だ」

 イマーム・フセインは預言者ムハンマドの孫で、彼がスンニ派のカリフ、ヤジドの軍に殺害された事件は、シーア派の教義の中核をなしている。

 アハマディネジャドは大統領選の演説で、ヤジドがイマーム・フセインを殺害したように、ムサビのような旧体制の人間が自分を追い落とそうとしていると訴えた。

「イマーム・フセインを殉教死させたように、私たちを抹殺することはできない」と、アハマディネジャドは2週間前、テヘランで開かれた宗教集会で語った。

「自分をイマーム・フセインになぞらえるとは、いい度胸だ」と、アリは言う。「しかも、イラクとの戦時中に首相を務め、ホメイニ師の盟友だったムサビをヤジドに例えるとは。これは国民に対する欺瞞だ」

 アリは今や、アハマディネジャド政権の4年間すべてに疑問を感じている。「われわれは(国会議長のアリ・)ラリジャニから、世界との無用な衝突を避けるためにホロコーストについての発言は控えるよう言われている。なのにアハマディネジャドは、ジュネーブでまたその話題に触れた」

 昨年4月、アハマディネジャドが国連の世界人種差別撤廃会議の席でホロコーストを疑問視する発言をすると、欧米諸国の多くの代表が席を立った。

「敵がイランを攻撃する口実を探している最中に、アハマディネジャドは理由もなくイランへの反感をかき立てている」と、アリは言う。「祖国に論理と知性を取り戻す大統領が必要だ。だから、私はムサビに投票する」

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