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北朝鮮北の核実験に過剰反応は逆効果
オバマ政権が北朝鮮の脅威を誇張すればするほど金正日はほくそ笑む
瀬戸際外交 金正日を核開発に走らせるのは「恐怖」だ Reuters
正直言って、北朝鮮が5月25日に強行した核実験は、バラク・オバマ米大統領が言うような「世界の平和と安全保障にとって重大な脅威」ではない。脅威は実験前と何ら変わっていない。オバマのように大騒ぎするのは、状況を悪化させるだけだ。
小学生時代を思い出してほしい。ガキ大将はいじめる対象が取り乱すと、いじめの手をさらに強める。今回の場合、北朝鮮が「ガキ大将」で、アメリカの過剰反応した言葉は、北朝鮮に君臨する見当違いの指導者を喜ばせるだけだ。アメリカが脅威を誇張すれば、北朝鮮の外交力が増し、核開発を中止させるのがさらに難しくなる。アメリカはこのガキ大将がまさに切望しているものを与えているのだ。
北朝鮮は06年10月に初の核実験を行い、核兵器能力を証明した。当時、アメリカの情報機関は北朝鮮が6〜8個の核爆弾をつくるのに十分な核物質を保持していると推測した。ただしそれ以降は、第2次ブッシュ政権の核交渉担当者クリストファー・ヒル国務次官補の働きによって、北朝鮮の核保有量が増えることはなかった。ヒルは北朝鮮を説得し、寧辺の核施設の無能力化を約束させた。
オバマの側近たちがこの若い大統領を「厳格で毅然たる指導者」として演出したい気持ちはわかる。しかし一筋縄ではいかない北朝鮮との交渉の末にブッシュ政権が得た教訓の1つは、北朝鮮の瀬戸際外交には静かに秘めた決意で対処することだ。これが金正日と側近たちを戸惑わせることのできる外交戦略だ。オバマ政権も試してみるべきだろう。
北朝鮮がもたらす脅威に世界が怯えれば怯えるほど、北朝鮮の指導部を喜ばせ、さらなる外交カードを与えることになる。彼らは国内に極度の貧困を招いた自分たちの経済失策を補填する手段として核兵器を捉えている。この国の核開発政策の最大の被害者は国民だという悲しい現実だ。
もしオバマ政権が北朝鮮と「度胸比べ」に走ったらどうなるか。アメリカが軍事行動も辞さないとちらつかせば、北朝鮮の瀬戸際外交を助長するだけだ。空爆や海上封鎖は、アメリカの「信頼」を保つための自己満足にしかならない。
いずれにせよ、軍事力をちらつかせても効果はない。オバマは安全保障担当の顧問たちと話せば、北朝鮮の核開発を止めるために武力行使という選択肢はないと悟るだろう。それどころか、アメリカによる軍事行動は朝鮮半島で戦争を招き、米兵はいうまでもなく、韓国国民の命を危険にさらすことになる。
ではどう対処すればいいのか。6カ国協議を再開し、2国間協議も行い、交渉による解決を目指すのが唯一にして最善の策だ。アメリカとその同盟国である日本、韓国、また中国やロシアの共通の目的である北東アジアの安定化にはこれしか方法がない。
国連安保理で結束して北朝鮮を非難することは、間違ってはいない。しかし単に北朝鮮を孤立化させ、さらなる経済制裁を課す方向に向かえば、アメリカの目指す結果は得られないだろう。北朝鮮への圧力は、他の外交手段を伴う必要がある。(核兵器を放棄させた)北朝鮮に安全を保障し、経済の立て直しに手を貸してやることだ。
アメリカと国際社会は金正日に核開発を思いとどまらせるために、北朝鮮の最大の武器である「恐怖」を取り除かなければならない。入念な計算と巧みな外交を通じて、彼らが求める安全と経済成長、そして国際社会からの敬意は瀬戸際外交によって得られるものではないと教えてやるのだ。そうすれば世界は北朝鮮が仕掛ける脅威を克服することができだろう。
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