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裸に無表情で「ドン引き」される覚悟...エマ・ストーンの「奇怪な変身」が魅力的すぎる理由

Emma Stone’s Freak Era

2024年09月27日(金)13時34分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)
エマ・ストーンのコラージュ画像

PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS AND SCREENGRABS BY SEARCHLIGHT PICTURES AND SHOWTIMEーSLATE

<ドジで可愛いフツーの女の子役から奇想天外なキャラクターへ。鬼才ヨルゴス・ランティモス監督との「最強タッグ」最新作『憐れみの3章』も実験的な作品に──>

嘘でしょ──。

2017年のアカデミー賞授賞式で、初の主演女優賞に輝いたエマ・ストーンは、まるでそう言いたげだった。出演作『ラ・ラ・ランド』は、その年の賞レースを総なめにしていたが、壇上で大先輩だらけの観衆を前にしたストーンは顔が引きつって見えた。


あれから7年。今年3月のアカデミー賞授賞式で、『哀れなるものたち』での演技で再び主演女優賞を受賞したときも、ストーンの表情は硬かった。受賞スピーチのときはリラックスしていたが、名前を呼ばれた瞬間は、何か不安でもあるかのような居心地の悪そうな顔をした。

ひょっとするとそれは、アメリカ先住民として初ノミネートされていた、リリー・グラッドストーンの歴史的な受賞を阻むことになったからかもしれない。

ストーンは15年の映画『アロハ』で、中国系とハワイ先住民の血を引く役にキャスティングされて非難されたことがあり、その種のことに敏感になっていた可能性もある。

だが、それはストーンの20年近いキャリアで、ほぼ唯一バッシングを受けた経験であることは注目に値する。なにしろアン・ハサウェイのように、オスカーを受賞するやいなや、「理由はよく分からないけど鼻につく」とたたかれる俳優は少なくない。

現在35歳のストーンは、同世代で最も才能があり、最も高く評価されている俳優の1人だ。実際、今年の受賞で、アカデミー賞の主演女優賞を2回手にした名優(ほかにジョディ・フォスターやメリル・ストリープがいる)の仲間入りを果たした。

だが、その地位に安穏とするつもりは全くないようだ。

むしろストーンは、名声が高まれば高まるほど、一風変わった(見方によっては奇怪な)役柄に挑戦するようになった。その意欲は、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督という同志を得たことで勢いづいている。

同監督の『女王陛下のお気に入り』(18年)で、ストーンは18世紀イングランドの女王に仕える毒舌の侍女、『哀れなるものたち』(23年)で新生児の脳を持つ女性ベラ、そして最新作『憐れみの3章』(日本公開は9月27日)で3人の女性を演じて、観客がどこまで自分に付いてこられるか試しているかのようだ。

ブレイクはしたけれど

さらにストーンは、人気バラエティー番組『サタデー・ナイト・ライブ』の脚本などで知られる夫デイブ・マッカリーと制作会社を立ち上げて、独特のコメディー映画やホラードラマなど、冒険的な作品をプロデュースしてきた。

だが、『哀れなるものたち』で多くの賞を受賞したように、ストーンが手がける奇想天外なキャラクターや作品は、一握りの人にしか分からない難解なものに陥ることはない。その摩訶不思議な世界観を共有できて、私たちはラッキーだと思うべきだろう。

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