サラ・マクラクラン、名盤『エクスタシー』を語る 「もう好きなようにやるって開き直った」
An Ecstatic Anniversary
『エクスタシー』を全曲演奏するコンサートの売り上げの一部は、マクラクランが主宰する音楽教育関係のNPOに寄付される AL PEREIRAーWIREIMAGE/GETTY IMAGES
<歌手サラ・マクラクランが出世作『エクスタシー』を全曲再現する北米コンサートツアーをスタート>
「『もうすぐ30周年だって知ってる? 記念にコンサートツアーをやらなきゃね』。みんなにそう言われて計算したら、本当に30年もたっていてびっくりした」
30周年を迎えたのはカナダのシンガーソングライター、サラ・マクラクラン(56)が1993年に発表した3枚目のアルバム『エクスタシー』だ。制作時はこれが大ブレイクのきっかけになるとは夢にも思わず、ただ心境の変化を感じながら曲を書き、レコーディングに臨んだという。
「身軽な気分だった」と、マクラクランは本誌に語った。「あんなに長い期間恋人がいないのは初めてで、とにかく自由を満喫していた。アルバムものびのび楽しんで作ることができた」
故郷カナダでは91年の2枚目『ときめき』で地位を確立していたマクラクランだが、その名をより広い世界に知らしめたのが『エクスタシー』だった。特にアメリカでは人気が高く、現在までに約300万枚を売り上げている。
マクラクランはこれを序章として地道に公演を重ね、4枚目の『サーフィシング』で名実共にスターの座をつかみ、女性アーティスト中心の音楽フェスティバル「リリス・フェア」を立ち上げた。
アルバム『エクスタシー』は多彩な心の動きを表現
@official.sarahmclachlan The Fumbling Towards Ecstasy 30th Anniversary Tour begins in just three months! Secure your tickets at SarahMcLachlan.com #SarahMcLachlan #FumblingTowardsEcstasy #30thAnniversary #Tour ♬ Angel - Sarah McLachlan
この夏マクラクランは5月23日のバンクーバー公演を皮切りに、『エクスタシー30周年記念ツアー』で北米を回る。アルバムを全曲通しで再現する趣向で、チケットの売り上げ1枚につき1ドルが、青少年に無償で音楽教育を提供する非営利団体「サラ・マクラクラン・スクール・オブ・ミュージック」に寄付される。
ゲストに招いたファイストとアリソン・ラッセルもカナダ出身だ。「今までも女性アーティストと共演し、前座をお願いしてきた。私は2人の大ファンだから、ツアーは交流を深めるいい機会よ」
マクラクランは『エクスタシー』を、ほかのどのアルバムよりもすんなり曲が生まれた1枚と表現する。芸術的にもっと冒険していいのだと手応えを感じながら、彼女はこの作品を作り上げた。
「(88年の)デビュー作『タッチ』は高く評価されたけれど売り上げは今いちだったから、2枚目では前作を超えなきゃと肩に力が入った。でも3枚目になると『いいや。もう好きなようにやる』という開き直りの境地に。贅沢なことに、創作面では自由にさせてもらえた。それが成功の一因だと思うし、楽しかったのは間違いない。前作のようなプレッシャーを感じず、自分らしさを追求できた」
孤独、不安、メランコリー、憧れに希望。マクラクランの艶のあるボーカルが、豊かで深みのあるサウンドと空気感をバックに多彩な心の機微を浮かび上がらせる。