サラ・マクラクラン、名盤『エクスタシー』を語る 「もう好きなようにやるって開き直った」
An Ecstatic Anniversary
ダークで強烈な印象を残すオープニングナンバー「ポゼッション」は、ファンのストーカー行為に怯えた体験を基に書かれた。「恐ろしくて訳が分からなかった」と、マクラクランは回想する。
「グッド・イナフ」は女性に対する暴力を取り上げて、胸に迫る。
「あの曲では親しい女友達をモデルにした。恋人の虐待に耐えている彼女に、『あなたにはもっとふさわしい人がいる』と伝えたかった。これは友情ソングであると同時に、聞く人みなに『あなたには自分で思うより大きな価値がある』と訴えた曲なの」
ラストを飾る2曲「おそれ」と「エクスタシー」ではアルバムのテーマを凝縮するかのように、それぞれ不安と勇気を歌った。
「私は人生の暗い面に引かれるたちなんだと思う。試練を歌にすると嘘みたいに気持ちが晴れるから」と、マクラクランは言う。「でも楽観的な面もあって、歌詞に希望を込めることを大事にしてきた。暗いテーマに引かれるからこそ、希望を探さないと幸せな自分に戻れない(笑)」
伝説のフェスが「誇り」と語るマクラクラン
『エクスタシー』をリリースした後の2年間は公演に明け暮れ、ツアーを通じて知名度を上げた。「200人だった観客が1000人、2000人へと増えた。そうやってファン層を築いていった」
『エクスタシー』の評判と売れ行きを土台に、97年には『サーフィシング』が世界で大ヒット。リリス・フェアを主宰し、ヘッドライナーを務めたのもこの年だった。
シェリル・クロウ、トレイシー・チャップマン、フィオナ・アップルをはじめ豪華メンバーが集結した伝説のフェスについて、マクラクランは「今でも胸が躍る」と語る。
「フェスに携わり、あんなに大勢の女性アーティストに賛同してもらえたのはとても幸福で名誉なことだった。互いに高め合うことで私たち女は生き延び、耐え忍び、繁栄してきた。この世のシステムは全て男が男のために作ったもの。リリス・フェアはそこに風穴を開ける1つの方法だった。心から誇りに思う」
ツアーでこれまでの軌跡を振り返りつつ、未来も見ている。「新作に取り組んでいるの。プロデューサーたちも私もいくつも企画を抱えて忙しいから、少しずつ進めるしかない。暇を見つけては互いの予定を押さえている」
デビューから35年後の今も気分は12歳の子供だと、マクラクランは言う。
「音楽のおかげでこの素晴らしい人生に恵まれ、今も夢なんじゃないかと毎日頰をつねっている。35年がたっても好きな音楽をやり、それを人々が聞きに来てくれるなんて、本当に夢みたい」