スパイに憧れたウクライナ人少女が、キアヌ・リーブスの「先生」になった本当の話
“I Trained Keanu Reeves”
天職に気付いたときには、自分でそれが分かると誰かが言っていたが、私の場合はまさにこの瞬間がそうだった。まるで前世でも役者の仕事をしていたかのように感じられた。
私は思った。「いつか映画でスパイの役を演じられるかもしれない。そうなれば、子供の頃の夢を実現できる」
その頃、ウクライナ人歌手であるルスラナのアメリカ公演にダンサーとして参加する機会があった。当初の予定では、私はアメリカでリハーサルをして、公演をして、後は荷物をまとめて帰るだけのはずだった。ビザの有効期間は5日間しかなかった。
ところが、ルスラナが驚くようなことをした。私の帰国便のチケットをロサンゼルス行きの便に変更し、アメリカで夢を追求するよう勧めてくれたのだ。
こうして私は、ほとんどお金も持ち物もなしに、コンサートのギャラの200ドルと夢だけを持ってアメリカに残ることになった。
当時は、「#MeToo」運動で映画産業の性加害者への告発が相次ぐ前。権力を持つ人たちの言うとおりにしなければハリウッドでは成功できないと、何度か言われたことがあった。
幸い、私は父からいつも言い聞かされていた。おまえはファイターだ、おまえは最後には必ず勝つ──。そのおかげで、こうしたアドバイスの類いに耳を貸すことはなく、自分の望まないことは一度もしなかった。
それでも、ハリウッドの映画産業に食い込むまでには長い期間を要した。私をだまそうとする人も大勢いた。アクション映画の仕事が初めて決まったのは2020年のこと。暗殺者役だった。
彼が私の人生を変えた
その次の映画の仕事が決まった後、役作りの一環として銃器の扱い方のトレーニングを受けてみないかと、友人から誘われた。このとき出会ったのが、キアヌに銃器のトレーニングを行っていたタラン・バトラーだった。